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内容説明
夏季休暇を翌日に控えた大学図書館で、ひとりの女性が書庫に閉じ込められた。鉄とコンクリートで固められた密室のなかで、彼女は必死に脱出をはかり、外部との連絡を試みるが―。奇篇『墓』の阿知波五郎をはじめ、一読忘れがたい名作を書きながら、いつしか表舞台から姿を消していった12人の作家たち。その生涯を追跡したエッセイと、いまなお新鮮な光芒をはなつ実作品との二本立てでおくる、好評『幻の探偵作家を求めて』第2弾。
目次
今様赤ひげ先生―羽志主水
「監獄部屋」
実直なグロテスキスト―潮寒二
「蚯蚓の恐怖」
夭折した浪漫趣味者―渡辺温
「可哀相な姉」
ただ一度のペンネーム―独多甚九
「網膜物語」
初の乱歩特集を編んだ―大慈宗一郎
「雪空」
『Zの悲劇』も訳した技巧派―岩田賛
「里見夫人の衣裳鞄」
『宝石』3編同時掲載の快挙―竹村直伸
「風の便り」
草原に消えた郷警部―大庭武年
「牧師服の男」
名編集長交遊録―九鬼紫郎
「豹助、都へ行く」
医学博士のダンディズム―白井龍三
「渦の記憶」
『宝石』新人賞大貫進の正体―藤井礼子
「初釜」
『めどうさ』に託した情熱―阿知波五郎
「墓」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
☆よいこ
78
古典探偵小説短編アンソロジー。横溝正史江戸川乱歩時代に刊行された探偵小説雑誌に掲載された作品を集める。小説家の家族や親類知人に取材し、制作秘話や故人のエピソードをまとめたものに、短編がつく。1.『監獄部屋』羽志主水/過酷労働の訴えしたが…2.『蚯蚓の恐怖』潮寒二/行方不明の夫は殺されたと思い込む夫人3.『可哀想な姉』渡辺温/唖娘 4.『網膜物語』独多甚九/犯人特定5.『雪空』大慈宗一郎/恋人は妹か6.『里見夫人の衣装鞄』岩田賛/サロン7.『風の便り』竹村直伸/子供の手紙8.『牧師服の男』大庭武年/宝石詐欺2022/02/13
timeturner
6
大正15年から昭和35年の間に忘れがたいミステリ短編を発表しながら姿を消した12作家の代表作と、本人または関係者とのインタビューを並べて紹介する。独多甚九「網膜物語」、白井龍三「渦の記憶」、阿知波五郎「墓」など医師ならではの知識を駆使して書いた作品のリアルさにびっくり。羽志主水「監獄部屋」や渡辺温「可哀相な姉」も衝撃的な内容だった。当時の雑誌編集部がやたら原稿を紛失しているのには驚いた。それでも通ってしまうくらい作家の立場は弱かったのかな。2025/01/12
sattin
0
探偵小説じゃないのもあるみたいだけど、ユニークなのが多くて面白かった。途中に挟まってるエッセイはとくになくてもと思ったけど。米澤さんのエッセイから渡辺温に流れてきました。2022/02/13
眼鏡の狸
0
アンソロジー。面白かった! 独多甚九「網膜物語」が目的で読んだ。眼科医が書いた医学ミステリ。 自身の患者とアメリカの医学雑誌に掲載されている患者は同一人物なのでは?網膜血管の写真から判断できるはずという興味を満たす眼科医に、当の患者は「先生、いよいよ私をつかまえに来たんでしょう?」 展開が面白く、優しいラストもよい。 ただ、硬い文章で若干の論文っぽさもあるので、好みが分かれるかもしれない。頭のいい人が書いたちょっと固めの文章が好きなので楽しめた。頭のいい人が書いた文章を読んだって賢くならないのだけれども。2020/04/11