内容説明
ぼくはトランペットに夢中。魂をゆさぶるあの響きがたまらない。ミュージシャンになりたいんだ!ニューヨークはグリニッチ・ヴィレッジのジャズメンの世界にとびこんだ白人少年の夢と葛藤をいきいきと描き、「最高の青春小説」と絶賛された話題作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
シュシュ
24
ジャズについてはあまり詳しくない私だけど、面白かった。主人公の白人の少年が出会うジャズミュージシャンとその回りの人たちの言葉に「そうそう!」「確かに!」と頷きたくなる場面が多々あった。ソウルとかスイングという言葉を感じる一方で、アメリカの社会の複雑さを感じた。訳者の木島始さんが訳した黒人の男の子の絵本『ピーターのいす』を思い出した。この絵本の作者のキーツは白人だが、この絵本には黒人の男の子に対する愛着を感じられる。木島さんもそうだったんじゃないかな。2017/01/20
ひじき
16
【海外作品読書会】18歳の時に読んで「生涯ベスト本」と決めて以来、何度めかの再読だけれど、やっぱりいい。登場人物たちの言葉がどれも深いのだ。そして音楽が好きでいてほんとによかったと思う。作者のナット・ヘントフはジャズや政治のコラムニストで、この作品が最初の青春小説。主人公のトムは16歳。白人で家は上流階級。ジャズ・ミュージシャンになりたい(ジャズの国に入りたい)けれど、黒人でないことの引け目、大学に行くべきだろうかという迷い、音楽でやっていけるだろうかという不安もある。でも最後はちゃんと正しい選択をする。2015/07/17
saladin
4
ジャズ・ミュージシャンを夢見る16歳の少年トムのお話。で、このトムがかなりストイック。普通女の子や遊びに現を抜かすであろう年代なのにひたすらジャズに傾倒する。それゆえに、自分が白人であることで”ブルース”がないのではないかと悩む…。が、興味深いのはゴッドフリーなどトムと関わることになるジャズ・ミュージシャンたちのリアルな描写だ。さすが著名なジャズ批評家だけのことはある。そのジャズ批評家が嫌な奴として登場するという自虐ネタも織り込んでいたり。2020/11/23
porcoooo
4
装丁といったタンジブルなものから、翻訳までの、この軽やかさ、爽やかさといったらどうだろう。若者の本離れとか、出版不況とか騒がれる昨今だけど、こういう良書に出会うと、「本を作り出す側に怠惰はないんだろうか?」と問いたくなる。2015/11/20
Junya Akiba
3
ジャズコラムニストのナット・ヘンホフが小説を書くとは知らなかった。ジャズが好きで黒人コミュニティーに飛び込む白人高校生の物語。ジャズミュージシャンにとって音楽とはどういうものか?それを遠回しに教えてくれるのは明らかにセロニアス・モンクをモデルにした黒人ピアニストだが、音楽そのものの理解よりも、彼と彼を取り巻く人びとを介して、人種の壁を乗り越えていくところが一番の読みどころかも。読み終えて、ジャズカントリーとは、音楽のことではなく、白人・黒人が互いに共存する国という意味ではないか、と思いながら読了。 2017/07/17