出版社内容情報
真に人間の幸福と喜びに結びつく経済を創造するために!
「文化力」と「創造的活動欲求」に着目した新時代の経済学。
20世紀は製造業中心の「モノの時代」であり、人々の「防衛的活動欲求」を満たす経済であった。その意味で産業経済学の時代であったといえる。しかし、21世紀はサービス中心の時代であり、人々の「創造的活動欲求」を満たす経済であり、その意味で「文化経済学」の時代である。本書は「文化の時代」を意識して、従来の経済学の教科書とは異なる観点に立ち、新しい経済のあり方について著したものである。現在の先進諸国の産業構造をみると、サービスを提供する第三次産業が大きな割合を占めている。よって本書では第一に、サービスを主体とした経済、いわゆるポスト工業社会の様相に着目していく。第二に、従来の経済学では、経済発展・成長は人々を幸福にするとされてきた。しかし本書では、経済の発展・成長が必ずしも人間の幸福に結びつかない「幸福のパラドックス」の発生を分析する。文化力を「富を幸福に転換する能力」と捉えるなら、この文化力が低下すれば、たとえ経済が成長し人々の富が増加しても幸福になるとは限らないということになる。 第三に、人間の活動を防衛的活動と創造的活動に分類すると、前者は苦痛を取り除き生活を便利にし、後者は人々を楽しくさせるものである。防衛的活動には「トレッドミル効果」*が働き、最初は便利さに感激し、満足が高まるが、その状態に慣れてしまえば満足感も麻痺し、かえってそれを失った時の苦痛におびえることになる。一方、たとえば芸術やスポーツに熱中している状態に典型的なように、創造的活動は常に人間に感激を与え、気持ちを浮き立たせ、幸福感を向上させる。文化力はまさにこの創造的活動と深く関わっており、文化関連産業の発展に寄与する点で、「文化の時代」に最も求められるものといえよう。(著者 駄田井 正)
* トレッドミル効果:現代の消費社会・競争社会に特徴的な、満足感や幸福感への希求の「際限のなさ」を表す概念。現代人はお金、車、マイホームなど各種のステータスに縛られ、加速するトレッドミル(ランニングマシーン)からなかなか降りられず、その状態自体が幸福をさらに停滞させている。詳しくは小社刊『お金と幸福のおかしな関係』参照。
内容説明
考えよう!人間の幸福に結び付く経済を。「文化力」と「創造的活動欲求」に着目した新時代の経済学入門書。
目次
第1章 工業化社会の特色
第2章 第3次産業の成長とエレクトロニクス革命
第3章 ポスト工業社会の特色と産業構造
第4章 ポスト工業社会の技術的特性と組織
第5章 環境と文化
第6章 文化的修練の重要性―文化経済学の視点
第7章 共同的・非官僚的・多様な社会的組織
エピローグ 経済の優位性の崩壊
著者等紹介
駄田井正[ダタイタダシ]
1944年生まれ。大阪府立大学大学院卒。1970年から久留米大学に勤務し、現在久留米大学経済学部教授。専門はもともと理論経済学・経済学史であるが、近年はポスト工業社会の観点から地域の振興に関心をもち、文化経済学・地域経済学・観光学などに専門を移している。この分野の研究は実践と不可分であるので、地域振興の活動に参加している。その関係で、1999年から「NPO法人筑後川流域連携倶楽部」、2003年から「NPO法人九州流域連携会議」の理事長を務めている
浦川康弘[ウラカワヤスヒロ]
1953年、福岡県生まれ。1982年、福岡大学大学院商学研究科修士課程卒業。2005年、久留米大学大学院比較文化研究科後期博士課程比較文化専攻満期退学。現在、久留米大学比較文化研究所研究員。専門は流通論、流通政策(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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