出版社内容情報
松陰の米国密航を阻んだ横浜の村犬、ペリー艦隊に乗船し米国に渡った狆、犬連れ西郷の西南戦争…犬関連の史料を渉猟し全く新しい明治維新像を描く傑作ノンフィクション。
仁科邦男[ニシナクニオ]
著・文・その他
内容説明
幕末の開国は、犬たちにとっても激動の時代の幕開けだった。幕府から米国への贈り物としてペリー艦隊に乗り海を渡った狆。下田や横浜に現れた外国人に棒で殴られても応戦した町犬、村犬たち。明治を迎えると、洋犬が世を席巻。多くの洋犬がポチと名付けられ、町じゅうポチだらけの時代が到来する―。膨大な史料を渉猟し「犬にとっての幕末明治」を描く傑作ノンフィクション。
目次
第1章 犬たちの開国
第2章 横浜開港
第3章 犬たちの明治維新
第4章 西郷どんの犬
第5章 ポチの誕生
終章 薩摩の犬のその後
著者等紹介
仁科邦男[ニシナクニオ]
1948年東京生まれ。70年、早稲田大学政治経済学部卒業後、毎日新聞社入社。下関支局、西部本社報道部、『サンデー毎日』編集部、社会部などを経て2001年、出版担当出版局長。05年から11年まで毎日映画社社長を務める。動物文学会会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
56
激動の幕末から明治、時代の波に翻弄されたのは人間だけではなく犬もだった。明治維新における犬たちの境遇の変化を描いた一冊。兎に角未だ知らざるエピソードの連続で、どこを読んでも面白い。明治以前は犬を個人で飼う事はなく里犬、町犬として飼っていたという驚きの事実から始まり、ペリー始め初期訪日外国人と狆とか、外国犬をカメと読んでいた事、西郷さんと犬の知られざる関係、ポチという名称の誕生など、兎に角興味深からざる箇所が無い。犬自体はなんら変わらないのに、人間が一方的に「近代化」を押し付ける様子が何とも哀しいなあ。2017/11/07
トムトム
33
期待以上に面白い本でした。江戸時代の犬たちは特定の飼い主がいない放し飼い、村の仲間。インド・中国の野良犬と違い、丸々太って毛ヅヤがよく昼間っから働きもせずゴロンと寝ていたそうな。日本人が自然と共存できていたのは、緩衝地帯の里山があったからといわれてますが、犬も重要だと気付きました。犬と友達になれたから人類はこんなに繁栄出来たという説がありますが、本当かも!野生動物がナワバリ(村)に進入してきたら、犬たちが追い返してくれるもんね!現在の猪・猿・鹿などの害は、犬を放し飼いにできれば解決する気がします。2021/02/12
すーぱーじゅげむ
16
参考文献の量が多くて、作者の熱意を感じます。江戸時代の犬のありかたから、黒船が来て維新、文明開化となったのは人も犬も同じことだった。一番興味をひかれたのは明治以前の「里犬」という犬のありかたで、村や町に属して近所の人の残飯をもらい、よそ者に吠えることと子供と遊ぶことが仕事、というもの。「飼い主が責任を持って飼う」という今では当たり前のことが、西洋から入ってきた個人主義的考え方だったそうです。鑑札を首につけていない犬は撲殺、戦争中の飼い犬の供出は痛ましい。西郷隆盛の犬エピソードはすべて微笑ましかったです。2024/11/25
志波昌明
14
明治維新を背景に、様々な犬にまつわる歴史が語られ面白かった。今話題の西郷さんの銅像の犬のモデルや制作過程、西南戦争の時に西郷さんがしていた兎狩りなど。なぜ犬の名前にポチが多いのか、とか、明治の頃、洋犬が入ってきた経緯、日本人が洋犬の名前をカメと思った理由なども面白かった。多くの資料からの引用も多くて、作者が詳しく調べていることが伝わってくる。2018/02/01
nagoyan
7
優。とても面白い。日本人と犬たちとのかかわりが、「近代化」によってどのように変化したのか。そして、犬たちは、日本人の歴史とどのようにかかわってきたのか。一番に海を渡ったのは「狆」だった。開国後、西洋人は「狆」を珍重する。その一方で、洋犬が日本に持ち込まれる。維新政府は近代化政策として無主犬の撲殺などを始める。里犬・日本犬があっという間にいなくなっていく。西郷隆盛はなぜ犬を連れて西南戦争を戦っていたのか。明治天皇と西郷の近しい関係。犬の名の代表「ポチ」の由来は。最後に太平洋戦争末期犬たちを襲った不幸を描く。2017/03/15