内容説明
東ドイツの抒情詩人ライナー・クンツェは、反体制的な要注意人物として当局の厳しい監視下におかれていた。作品の刊行もままならず、公の場に出るにもさまざまな妨害にあう。そうした精神的苦痛のはてについに1977年、クンツェは西ドイツへの移住を余儀なくされた。そして1990年の東西ドイツ統合。これまで明かされていなかった東ドイツ国家保安機関の監視活動の内容が続々と明るみに出てきた。この機関には、400万人分もの自国民に関する秘密調査ファイルが保管されていたというが、その中にクンツェは自分に関するファイルを発見した。「抒情詩」というコードネームを付されたそのファイルは、全12巻、3491ページにもおよぶ膨大なものだったという。本書はクンツェ自身の編集による、クンツェに対して行われていた監視と秘密工作の記録であり、思想統制社会の戦慄すべき側面が、生々しく描き出されている。
目次
開始報告
「プラハの春」
工作活動「抒情詩」
『素晴らしい歳月』
作家同盟除名
「私たちは出て行く」
感想・レビュー
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