内容説明
スタークは、未来都市のトラブルシューター。彼だけが、ある特殊な能力を備えていた。あるとき彼は、誘拐された重要人物を探し出すよう依頼される。しかし、事件は単なる捜索だけでは終わらず、スタークは次々と新たなトラブルに巻き込まれていく。だが、スタークにもうあと戻りは許されない。オンリー・フォワード―すべてを終結させるために、ただ前進するしかないのだ。2001年フィリップ・K・ディック賞受賞作。
著者等紹介
スミス,マイケル・マーシャル[スミス,マイケルマーシャル][Smith,Michael Marshall]
1965年、英国ナッツフォード生まれ。処女長編である『オンリー・フォワード』で、1995年の英国幻想文学賞長編部門オーガスト・ダーレス賞と、2001年のフィリップ・K・ディック賞を受賞。第2、第3長編の『スペアーズ』と『ワン・オヴ・アス』は映画化が進行している。第4長編『The Straw Men』も2001年9月には刊行の予定。現在は妻と猫たちに囲まれて北ロンドンに住み、ときどき英国ファンタジー協会の会合でビールを飲んでいる姿が見かけられる
嶋田洋一[シマダヨウイチ]
1956年、東京生まれ。静岡大学人文学部卒。翻訳家。日本SF作家クラブ会員
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感想・レビュー
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ケイ
136
クスリでトリップしたまま薄暗い中を手探りで疾走していたような感覚 。壁に当たったと思うと、次の部屋に。目を開けていられないほどチカチカしていたり、暗闇だったり。各部屋を通り抜けるごとに見えてくる記憶。知らされる真実。先が見えないし、狂気も介在するのに、タイトル通り先へ先へとページをめくるのは、主人公や周りの人達に悪意がないからだろう。所々に挟まれる言葉が気が利いていてニヤリとすることしきり。読後の解説で作者が20代で書いた第一作と知り納得した。再読して確認したい事がたくさんあるので、いずれまた読みたい。2017/06/26
NAO
56
各個人が自分の趣向にあった地区(近隣と呼ばれている)に住無用になっている近未来。主人公スタークは他の人にはない特殊な能力の持ち主で、そのため様々な「近隣」に知り合いがいて、様々な依頼を受けるトラブルシューターで、知り合いから「行く方不明になった男性を探してほしい」との依頼を受けたことから物語は始まる。話の中でよくわからない部分も多いのだが、雰囲気を愉しむことにする。何度も危険な状況に陥りながらも諦めずに行動し続けるスタークに肩入れし、ページをめくる手が止まらなくなる。2023/07/16
ヘラジカ
27
古い積読本ということで若干の義務感から読み始めたが、これがなかなかどうして面白い。前半は高クオリティな三文小説(矛盾してるけど)を読んでる感じで、アクション満載のハチャメチャぶりを大いに楽しんだ。しかし、本当に良いのはガラッとトーンの変わる後半。ただのSF小説ではないと思ってはいたが、まさかまさかこんな展開を見せるとは。喩えて言うなら小説版『インセプション』といったところ。前半からは考えられないシリアス展開は好き嫌い分かれるかもしれない。だがこのちぐはぐ感もこの作品の魅力の一つだろう。迷作・名作だと思う。2017/03/08
k16
4
誘拐された人物を探しだすところから始まり夢と過去の記憶世界の物語。 世界背景が特異で、先日読んだイーガンの「放浪者の軌道」を分かりやすくしたものと勝手に理解。 ジームランドはなんでもありだったのである意味ファンタジー。 ホラーやミステリー要素もあったな。2020/01/11
深海魚
2
よくある近未来ハードボイルドSFかと思いきやかなりユニークな作品で、ちょっぴり村上春樹の『世界の終りと~』っぽさもある。会社の部署名が“とりわけすぐやる部”でその課が“とことんがんばる課”だったり、世界がそれぞれ特色のありすぎる近隣区に分かれていたり(猫だけが棲む区や「外の世界はすでに滅びている」と信じ込まされている区などもある)細部がいちいち面白い。雰囲気はSFだけど理屈を飛ばしてファンタジーやホラーの域にまで達しているので良くも悪くもなんでもあり。ラストでどんどん内省的になっていくのも独特でした。2020/03/14