出版社内容情報
社会の秩序、均衡、規範を成り立たせているものは何か。社会科学のこの最も基本的な課題を、「正当化」と「偉大さ」というユニークな概念によって追究したものです。人々は、「正当化」と呼ばれる行為によって集合体を作り上げており、その際に呼び出される原理あるは善が、ここで「偉大さ」と呼ばれるものです。この正当化と偉大さの役割と性格、作用と構造を社会的世界のさまざまな局面において精緻に分析することによって、社会的存在としての人間を、けして受動的な存在ではなく、能動的な行為者、他者との共存・共生をはかる主体として研究する道を拓いた、現代フランス社会学の問題作です。
本書を読まれる方々は、以下の頁において、自分たちが慣れ親しんだ存在に遭遇しないことに何らかの困惑を感じられるかもしれない。社会科学や、今日の社会に流通する多数の数値データによってわれわれが慣れ親しんだ、集団、社会階級、労働者、幹部、若者、女性、有権者などがまったく現れないのである。経済学が個人と呼ぶ、認識や選好の土台として用いられる特性のない人間もまるで現れない。・・・・・・本書は集団、個人、あるいは登場人物には乏しいが、そのかわり多数の存在で溢れている。すなわち、時には人間存在、時には事物と言う存在であり、それらが登場する際の地位〔状態〕が同時に規定されなければ、決して出現しないような存在である。われわれが後で〔状況〕と呼ぶものを構成するこれらの〈地位=人間〉と〈地位=事物〉との関係が、本書の対象である。(「序章」より)
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【新 刊】
『 社会科学の理念 』 P・ウィンチ著 (定価2100円 初版1977を復刊)
『 資本主義黒書 市場経済との訣別 』 R・クルツ著 (上巻6930円 下巻4620円 2007)
内容説明
他者との共存はいかにして可能か?人々を不和から合意へと至らせる「正当化」の道筋をたどり、個と、個を超越する原理との間に切り結ばれる共通の「偉大さ」という価値を尺度に「市民体モデル」を構築し、人間科学における倫理の復権を唱える。
目次
われわれはいかにしてこの本を書いたか
第1部 正当化の命令法
第2部 市民体
第3部 共通世界
第4部 批判
第5部 批判の鎮静化
反省の語用論へ向けて
著者等紹介
ボルタンスキー,リュック[ボルタンスキー,リュック][Boltanski,Luc]
1940年生まれの社会学者。フランス国立社会科学高等研究院(EHESS)教授
テヴノー,ローラン[テヴノー,ローラン][Th´evenot,Laurent]
1949年生まれの統計学・経済学者。社会科学高等研究院教授。1984年に「道徳・政治社会学グループ」を発足。経済活動における合意や規約の問題に注目する「慣習の経済学」の担い手のひとり
三浦直希[ミウラナオキ]
1970年生まれ。上智大学卒、東京都立大学大学院人文科学研究科博士課程修了。フランス思想専攻。現在、上智大学および首都大学非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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hanatomoka
いとう・しんご singoito2