出版社内容情報
沼上幹教授(一橋大学名誉教授)が提唱した〈行為システム〉ならびに〈行為連鎖システム〉の概念を中核として、気鋭の研究者らがそれぞれの研究領域において、議論を展開する。
〈行為システム〉を中軸とする研究方法論は、2000 年、小社刊行の『行為の経営学』をはじめとする諸研究において探究されてきた。その根底にあるのは、大量のサンプルを定量的に分析する仮説検証型の研究方法のみが適切な経験的研究だという〈変数システム〉中心主義に対する疑問である。これに対し沼上教授が提起したのは、個人の主体性を重視し人間の自然な営みが組み込まれた人間観・社会観を基礎として、行為主体による意思をもった行為と複数の主体間の相互依存関係・複合的影響による結果の連鎖の考察を中核要素とする考え方、すなわち〈行為システム〉に基づくマネジメント研究の方法論である。
本書では、この〈行為システム〉を中軸に据えた研究方法論に関する議論や、そのような方法論に基づく定性的研究を取り上げると同時に、〈行為システム〉の考え方に基づいて積極的な意味づけを与えた上で推測統計の手法を用いた定量分析も展開される。現代の経営学研究において主流をなしていた研究方法論を批判的に検討しつつも、全面的に対峙するのではなく優れた要素は取り入れながら、より豊かな知見を獲得しようとするのが、本書の立場である。
今後の発展可能性を多分に有するこの概念、方法論は、本書での多面的な議論をベースとして、より精緻に展開され、洗練された見解や示唆を引き出していくはずである。経営学研究の新たな可能性を示す研究書である。
内容説明
沼上幹教授の“行為システム”概念から生まれる議論と展望。意図を持った個人の行為とその合成による結果と連鎖、そしてその背景にある因果メカニズムへの着目から導かれる、研究・実践への示唆。気鋭の研究者らによる論考は、経営学の発展へのさらなる一歩となるだろう。
目次
第1章 実践的方法論としての“行為システム”
第2章 行為の連鎖システムとしてのイノベーション・プロセス
第3章 競争戦略における相互作用と時間展開の定量的検討
第4章 倫理的消費とコミュニケーション―ヴィーガン、ノン・ヴィーガン、準ヴィーガンの相互作用のダイナミズム
第5章 組織の“重さ”―全7回の調査からの知見
第6章 リーダーシップの組織的消失―BU長のリーダーシップ行動の階層間比較
第7章 “行為システム”の構成要素と基本連鎖型
第8章 複層的事例研究の方法と実例
著者等紹介
加藤俊彦[カトウトシヒコ]
1990年一橋大学商学部卒業。1997年一橋大学大学院商学研究科博士課程単位修得退学。東京都立大学経済学部講師、助教授、一橋大学大学院商学研究科准教授などを経て、一橋大学大学院経営管理研究科教授。主著:『技術システムの構造と革新:方法論的視座に基づく経営学の探究』白桃書房、2011年(組織学会高宮賞、日本経営学会賞)ほか
佐々木将人[ササキマサト]
2003年一橋大学商学部卒業。2008年一橋大学大学院商学研究科博士課程単位修得退学。武蔵野大学政治経済学部講師、一橋大学大学院商学研究科講師などを経て、一橋大学経営管理研究科准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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