目次
第1章 アウトサイダー
第2章 逸脱の種類―継時的モデル
第3章 マリファナ使用者への道
第4章 マリファナ使用と社会統制
第5章 逸脱集団の文化―ダンス・ミュージシャン
第6章 逸脱的職業集団における経歴―ダンス・ミュージシャン
第7章 規則とその執行
第8章 道徳事業家
第9章 逸脱の研究―問題と共感
ラベリング理論への招待
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
こなこ
2
マリファナ使用者やミュージシャンへのインタビューがとても読みやすい。同時に当時のアメリカのマリファナの認識の仕方には驚いた。自分が無知なだけかもしれないけれど…。逸脱者は規則制定側によって作られるという旨のことが何度か述べられていたが、これは従来の研究では言及されてこなかったことであると。私も研究に対して少し離れたところから眺める姿勢が必要だと思った。2014/08/11
富士さん
1
逸脱は具体的な行動ではなく、関係者の政治によって、社会内で逸脱の地位を割り当てられた人々の行動である、と考えるラベリング理論。確かにそういう意味でも意義ある本ですが、今回読み直してみると、社会調査の本としても見事なものでした。特にジャズミュージシャンの調査は、芸術関連産業に従事する人たちの普遍的な葛藤を見事に描き出しており、事実上この分野の労働の理論であると言ってもいいように思います。また、実在は批判される側からも賞賛される側からも等距離にあるという世界観は、どんな調査でも最も基本的なものであるべきです。2017/09/07
Shuuya Hoshino
1
著名人による覚醒剤使用を受けて読み返したくなった。逸脱行動を防止するための社会統制をマリファナ使用者がいかにしてくぐり抜けるかが使用者すなわち当事者に対するインタビュー調査を基に考察される。使用をしていても通常人の面前で事の露見を回避できる(隠れた逸脱者!)ことの学習、「逃れられない習癖に身をゆだねた奴隷」「精神的な弱さのシンボル」という見方から解放された視点の習得(自分の立てた予定を厳守して使用をし十分にコントロールできていると確信する等)などリアルに鋭く迫っている。2016/02/27
もん
1
無意識の内にラベリングしてしまい、その両者を隔てるということについて考えさせられました。権力側と排除される側、正しさは立場によって違うのだと。2010/09/10
令和の殉教者
0
ラベリング理論・逸脱研究の古典。原著は1963年。当時の逸脱研究は、逸脱の原因を行為者の属性に帰しがちであった。対してベッカーは、逸脱行為はそれ自体逸脱なのではなく、社会に規則を設けて逸脱者のレッテルを張ろうとする人と逸脱者の相互作用の結果であると見て、その両者を対等に扱う必要性を説く。現に規則に反しながらも行為を告発されない「隠れた逸脱者」も存在する。次いで、逸脱者が行為を深めていく過程を見るための"継時的モデル"の重要さが説かれ、マリファナ使用者とダンス・ミュージシャンの参与観察の記述が始まる。2019/01/18