内容説明
ハイスクールの授業で実際におこった、不気味な事件。少女ローリーは、おそろしい集団的圧力が化けものになって、学校を席捲してしまうまえに、どうしてもそれを阻まなければならなかった。自ら授業をはじめた教師ロスの苦悩は…。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Aoyama Satsuko
38
ドイツ人の友人に勧められた一冊です。実際の事件に脚色を加え小説として書き下ろされた本書、実際にこのようにヒトラーユーゲントのような集団同調が学校で行われたと思うとぞっとします。とりわけ、日本人は同調性が強いのでそむけてはならないテーマかもしれません。あとがきにもありましたが、自己を見失うことや道徳観をなくしてしまうという悪い視点ばかりにテーマである集団同調について目を向けてしまいがちですが、そのような状況でも倫理的に、自らの思想として正しい判断を自ら行えるのかというのは日本人にも大切なことかもしれません。2019/01/31
Miyoshi Hirotaka
19
米国の高校で行われたファシズム体験授業で組織した集団「ザ・ウェーブ」が騒動を起こす話。授業で使った小道具や所作は変哲のないもので、活動が拡大する様は、経営学の理論で説明可能。一方、指導者が制御した部分と構成員の行動が自己増殖を始めた部分の境界は曖昧。集団の規律が個人の価値観に優先することはアイヒマン実験で証明済。文化大革命では集団が暴走し、甚大な犠牲者が出た。しかし、集団暴走のメカニズムはナチ党結成から謎のまま。愛国無罪を当然とする国に囲まれているわが国では、価値観の違う他集団から自らを守る算段をすべき。2024/05/13
田氏
17
歴史の教科書には、原因と結果しか載っていない。こいつは悪者なんだよ、と見せつけてきた人の教科書を見ると、大きく「↑悪いやつ」と落書きされている。20世紀のページなんか、もう真っ黒だ。わたしはそんな落書きをしてない、と言い返すと、あんた自分の頭で考えないんだね、と言われた。正義と悪とに区分けする線や、思いつきのストーリーをページじゅうに書き込むのが、考えることだというのだろうか。そんなの、書いてあったことを読みにくくするだけなのに。ふと手元を見ると、自分の教科書も落書きだらけで、破れているページすらあった。2019/02/08
zero1
8
高校教師のベンは、生徒たちにナチスの全体主義を経験させようと授業に取り入れた。 敬礼や旗に生徒たちは従うだけでなく熱狂する。 やがて、他のクラスやフットボールチームにも取り入れようとする生徒が現れて・・・ この作品は米国で実際にあった話なのでリアリティがある。 集団の行動は一度動き出すと止まらなくなる。 社会学や行動心理学の研究材料になりそう。 今の日本につながる部分あり。 与党の政治家は、教育勅語の教育へ用いようとしている。 我々は過去から何を学び、未来にどう生かすか。 本書で学ぶべきだ。2018/10/16
Moeko Matsuda
7
恐ろしい…恐ろしいなぁ…。読んでいるこっちにも、一体どこから歯車が狂いはじめたのかちっとも分からない。実際にそうなのだろう。実態の無い「集団の意思」が力を持ち始める瞬間は、誰にも分からないに違いないのだ。本作は、アメリカのハイスクールで起きた事件を下敷きにしたものだ。報告された実際の内容についても是非調べてみたい。私たちは誰も、このような現象についてもっと真摯に学ぶべきだと感じる。もっとも、学んだところで自分がその類の「洗脳」を回避できるかは、全く別の話だが…。2021/08/10