内容説明
「人間の連帯などいかに嘘っぱちかを暴力的なまでの明白さにおいてとらえるためには、20歳の頃に一度浮浪者になってみることが必要だ」―刑務所を出て冷酷非情な強盗団に身を投じ、人間の善意も死に対する宗教的な畏怖も何一つ信じないクールな男を描いた表題作ほか6篇収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
コジターレ
7
2冊目のマルセル・エイメ。奇想天外な設定の下、不条理、絶望、孤独を描きながら、どこか軽やかで淡い光が差すような温もりがある。不思議な作家だ。人間がどうしようもない存在だと認めたからこそ感じる愛おしさのようなものか。2024/01/20
funa1g
3
『壁抜け男』に続けて読んだが、こちらは奇想少なめで人間を皮肉に描いた短編が多い。その路線では差別されたアラブ人を描く「エヴァンジル通り」がベストだが、全体的に質は高い。「ぶりかえし」が良い奇想作品で、一年を二十四ヶ月にする法案が通ったことで、なぜか人間の年齢も半分になってしまう。結果として大人と子供の凄絶な争いが幕をあける。人々の醜さと美しさを描く筆致はここでも鋭く、ただ奇想を披露するだけに終わっていなくてとても良い。2024/08/28
ハルトライ
2
経済と政治が物語に潜り込み、ときにテーマにさえ出てくるマルセル・エイメ作品だが、このアンソロジーにもその要素は多く含まれている。それでいて、幻想性あふれるというところが、マルセル・エイメの面白さであり、そして、ただ小説をよく読むだけの文学ファンでは"理解しきれない部分"でもある。僕は、特に「ぶりかえし」が大好き。「後退」もなんというか、今の日本の時勢に合っていて、印象に残った。マルタン君物語のマルタンが主人公というのにもグッと来た。うざったすぎる訳者あとがきには、かなりがっかりしたが…。2014/10/14
すけきよ
0
う~ん。口に合うかと言われると、個人的には一味足りませんでした。読んでてつまらなくないんだけど、どうもイマイチはまれなかった。個人的お気に入りは、『エヴァンジル通り』と『われらが人生の犬たち』かな。2005/12/17