出版社内容情報
1920年代にドイツ共産党員として出発し、アメリカに亡命。50年代には「反共産主義」として登場した社会科学者K・A・ウィットフォーゲル。帝国主義支配の「正当化」論、あるいはオリエンタリズムとして今なお厳しい批判のまなざしにさらされているウィットフォーゲルのテキストに内在しつつ、その思想的・現在的な意義を再審する。スタンフォード大学フーバー研究所所蔵の膨大な関連資料を駆使した研究成果。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
南北
37
ウィットフォーゲルは大規模灌漑農業を行う社会を水利社会と命名し、専制政治となることが多いと指摘していますが、この理論に対して批判を交えつつ紹介するとともに中国と北朝鮮の実例を挙げて、理論がどう適用されるかを述べています。単なる「封建制」とは異なるとする見解には異論もあると思いますが、興味深い指摘だと思います。専制政治のままでは個人の所有権は確立できず、資本主義がまともに発展することはできません。世界第2位の経済大国となった中国は今も自国のルールが世界に通用すると思っているのです。2020/04/03
メルセ・ひすい
2
10. 15 アジア社会を封建性として把握するか、それとも東洋的専制として把握するか、という設問は古くて新しい問題だといわなければならない。なぜな ら、アジアの社会が世界の動きの一環に包摂され、その中で運動することを余儀なくされるとき、一見近代的に見えるその動きの影に、言いようのない古い残像 を垣間見るとき、これを封建的残滓として片付けるにはあまりに奥深いものを感じ取るからである。2008/07/08