内容説明
一八世紀、バウムガルテンの手により誕生した美学は、当初「感性の学」として構想された。しかしその後ヘーゲルらによる再編を経て、「美」や「芸術」の哲学へと変容していく。本書はそうした歴史的展開を踏まえつつも、一八世紀ドイツに端を発する美学の原点に立ち返り、「感情/感触(Gef¨uhl)」と「感覚(Empfindung)」という二つの概念に光を当てる。カント、ヘルダー、メンデルスゾーンらの思想のなかで、これらの概念はいかに捉えられ、そしてどのように美学の理論形成に寄与してきたのか。さらには、アカデミーの懸賞課題や翻訳といった当時の外的要因、実際の芸術現象たる多感様式の分析など、多角的な視点からその展開を探りつつ、現代の美学的議論や認知科学にも通じる知的地平を拓く。
目次
1 感情(ヘルダーにおける「われ感ず、ゆえにわれ在り」;美的判断における自己触発―「心の哲学」から見たカントの感情論;近世美学における「心臓の言語」―バウムガルテンとカント;Gef¨uhlは「触覚」か(いつから)「感情」か)
2 感覚(メンデルスゾーンの感覚論―美と倫理の結合子としての虚構;ヘルダーの感覚論―『認識と感覚』の同時代的位置;カントの感覚論―「共通感覚中枢」をめぐるゼンメリンクとの対話;ヴィンケルマンの感覚論―『感覚能力論』読解の試み;Empfindnis概念小史;「多感様式」をめぐって)
著者等紹介
杉山卓史[スギヤマタカシ]
1978年、愛知県生まれ。京都大学大学院文学研究科博士後期課程修了、博士(文学)。日本学術振興会特別研究員PD(2011~2012年)、筑波大学芸術系助教(2012~2016年)を経て、京都大学大学院文学研究科准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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