出版社内容情報
語られてこなかった自己負担――教職員、1,034人の声。
本書の概要
教職員自らによる経済的負担の存在は、関係者間では周知の事実であった。「自腹」には様々な経緯や背景が存在する。本書では全国の公立小・中学校に勤める1,034人の教職員に対し大規模調査を実施。集まった声をもとに、私費に頼らない公立学校の実現を模索する。
本書からわかること
授業の教材費、部活動の審判資格取得費用、家庭訪問の交通費、徴収金未納の立替……うやむやになってきた教職員の自己負担
採点用の文房具、授業のための教材、部活動の審判資格取得費用、大会への交通費、家庭訪問時のガソリン代、各家庭の徴収金未納の立て替え、物品破損の弁償――。教職員が仕事をする上で、必要なものを私費で負担する「自腹」。それは、人や学校により差はあるものの、金額の大小や費目・場面を問わず、これまでも確実に存在し、関係者間では周知の事実でした。
「自腹発生」の背景には、法制度上のマクロな理由に加え、「教育は生もの」という、常に柔軟さが必要とされる学校という場ならではの性質、もしくは各教職員側の意識や各学校の風土などのミクロな理由も複雑に絡み合っています。
本書は、その現状をありのままに映し出し、共有し、教職員が働きやすい公立学校を展望することを目的としています。
積極的自腹、消極的自腹、強迫的自腹。大規模調査でみえてきた枠組みと特徴
「未踏の地」であった自腹という現象に踏み込むため、「教職員の自己負担額に関する調査(2022年度間)」を実施。全国の公立小・中学校に勤務する、現在の職についてから2年目以降の教職員計1,034人に対し、下記のカテゴリについて2022年度に自己負担した名目や金額、その経緯、また、これまでの教職員人生における支出総額などを調査しました。
【調査対象】
校長、教頭、副校長、主幹教諭、指導教諭
教諭(正規雇用)、教諭(非正規雇用)
事務職員
【カテゴリ】
授業
部活動
旅費
弁償・代償
その他
その調査結果をもとに、10人いれば10人それぞれ、10回あれば10回それぞれの経緯や背景が存在する自腹を、「積極的」「消極的」「強迫的」という三つの分析枠組みで整理しながら、発生率・頻度の関係に加え、自腹への意識などについて分析します。また、属性別の傾向や学校の特徴との相関などについて、考察を行います。
こんなみなさまにおすすめ
・自腹の存在に違和感がある小・中学校教職員の方
・自腹を抑制していくための学校財務マネジメントの具体的な実践方法を知りたい学校事務職員の方
・自腹の抑制や教職員のよりよい働き方の実現のために、学校経営を見直していきたい学校管理職の方
・公立小・中学校教職員の自腹の状況について知りたいすべての方
内容説明
授業/部活動/旅費/弁償・代償/その他における自己負担について大規模調査を実施。集まった声を踏まえ、解決策を提案!自己負担からの解放と私費に頼らない公立学校をめざして。
目次
序章 自腹という未踏の地
第1部 自腹の事例(小学校教員・ミカ先生の自腹フルな1日;自腹をする理由;自腹に対する声)
第2部 自腹のデータ(調査の概要;調査からみえた実態;調査を踏まえた考察)
第3部 自腹の解決策(学校財務マネジメントの確立と意識改革;学校財務制度の改善と教育行政との連携)
終章 自腹からの解放
小学校教員・ミカ先生のノー自腹な1日
著者等紹介
福嶋尚子[フクシマショウコ]
千葉工業大学工学部教育センター准教授/「隠れ教育費」研究室チーフアナリスト。新潟大学教育人間科学部(当時)で教育行政学、教育法学、教育政策学を学び、修士課程を経て、2011年東京大学大学院教育学研究科の博士課程に進学。2015年度より千葉工業大学にて教職課程に助教として勤務し、2021年より准教授(現職)、教育行政学を担当。2016年12月に博士号(教育学)取得。モットーは「子どもを排除しない学校」「学校の自治」「公教育の無償性」の実現、「教職員の専門職性」の確立。研究関心は、教材整備、学校財務、学校評価、校則、給食、PTA、不登校など
〓澤靖明[ヤナギサワヤスアキ]
埼玉県川口市立青木中学校事務主幹/「隠れ教育費」研究室チーフディレクター。県内の小・中学校に事務職員として勤務。「事務職員の仕事を事務室の外へ開き、教育社会問題の解決に教育事務領域から寄与する」をモットーに、教職員・保護者・子ども・地域、そして現代社会へ情報を発信。研究関心は、家庭の教育費負担・就学支援制度。具体的には、「教育の機会均等と無償性」「子どもの権利」「PTA活動」などを研究している。勤務と並行し、中央大学法学部通信教育課程で学び、校内でリーガルサポートにも取り組む。日本教育事務学会理事(研究推進委員会副委員長)、学校事務法令研究会会長、川口市立労働安全衛生委員、川口市教育研究会事務局長などを務める
古殿真大[フルドノシンタ]
名古屋大学大学院教育発達科学研究科博士後期課程院生/日本学術振興会特別研究員(DC2)。筑波大学人間学群教育学類で教育社会学を学び、名古屋大学大学院教育発達科学研究科の博士課程に進学。専門は教育社会学、障害児教育。教育に医療の知識がもち込まれることに関心を寄せ、とりわけ情緒障害に着目し、歴史的な観点から研究をしている。「教育事例集に見られる緘黙児認識の変化」(『SNEジャーナル』)で日本特別ニーズ教育学会奨励賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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