出版社内容情報
《内容》 ※本草学は、医学・天文学などと並んで西洋の近代科学と対比される東アジアの伝統的科学の一つ。日本においては著しく博物学的色彩が強い方向に発展した。日本人の自然とのかかわり方や自然認識、あるいは自然科学への接近過程を見る上で、この博物学的な本草学の実態はきわめて興味深い。
※本草学的な世界は日本の文化史の上ではなお脈々と今日的意義を持っており、本草・博物学史の文化史的な視点からの見直しが求められている。
※本書では、日本本草学の頂点、小野蘭山の学統を考察の対象にし、洋学の影響を受け国際的視野を備えた博物学的な本草研究の実態を探り、わが国最初の近代的植物図譜『草木図説』誕生の環境を明らかにする。
《目次》
1 博物的本草学への道
中国本草学の移入と日本文化
江戸期の薬園
御深井御薬園の成立と変遷/御下屋敷御薬園の成立と変遷
将軍吉宗の和薬開発政策とオランダ薬剤調査
オランダ商館長日誌(1727~34年)の植物リスト/オランダ商館文書(1725~26年)の植物リスト
江戸期の物産会のはじまり
津島如蘭と本草会/物産会のはじまり
2 小野蘭山とその学統
小野蘭山と幕府医学館の本草学
小野蘭山と医学館薬園/小野蘭山と医学館薬品会/小野蘭山の本草講書/蘭山の後継者小野俸_Δ遼楞雎・小野蘭山学統の本草と植物学
日本的本草学の展開/読書室物産会について/水谷豊文と岩崎灌園/浅井貞庵と尾張本草学
3 本草学と洋学
『泰西本草名疏』から『草木図説』へ
伊藤圭介の医学と本草・博物学/ミュンチングの植物図譜の模写図/『草木図説』初版本の出版過程/『草木図説』草部の近世舶来植物
本草図から写真術へ
明治期の博物学 -小野職愨と伊藤圭介
内容説明
小野蘭山の門人・飯沼慾斎がわが国最初の近代的植物図譜『草木図説』を「閉居絶客」して執筆したとの通説がある。はたして「閉居絶客」して科学的自然研究ができたのであろうか。本書は、この通説に対する素朴な疑問から出発したものであり、江戸時代の自然研究の実態をさぐろうとして、この二〇数年間に行なった調査の結果をまとめたものである。
目次
1 博物的本草学への道(中国本草学の移入と日本文化;江戸期の薬園―尾張御薬園の事例;将軍吉宗の和薬開発政策とオランダ薬材調査;江戸期の物産会のはじまり)
2 小野蘭山とその学統(小野蘭山と幕府医学館の本草学;小野蘭山学統の本草と博物学)
3 本草学と洋学(『泰西本草名疏』から『草木図説』へ;本草図から写真術へ;明治期の博物学―小野職愨と伊藤圭介)
著者等紹介
遠藤正治[エンドウショウジ]
1940年岐阜市に生まれる。1962年名古屋大学理学部物理学科卒。岐阜県立高校教諭を経て愛知大学・同大学院非常勤講師
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