内容説明
すべてのものは透明になるというのなら、ダイヤになったあなたを、通りすがりの取るに足らない、知らない誰かにあげてしまいたかった。あなたを誰かにあげたかったあなたを誰かのものにしてあげたかった。―第54回現代詩手帖賞。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆう
31
中原中也賞受賞作品。「美しいからだよ」というタイトルに惹かれて読んだ。というのは、現代詩で、若い女性の詩人が、「からだ」をテーマにして作品を作っているということを読み取り、興味を持ったのだった。果たして本書の中には、身体性のリアリティと、性別に対する批評的な視点、抒情性ある会話が織りなす、危うく美しい世界が広がっている。それらをファクターに、水沢さんが採用するフレームはSF的だったり、神話的だったり、マンガ的だったりと多様だ。のびやかな想像力が呼びこむ新鮮な驚きを、心地よく享受した。2020/12/06
mer
14
塩素の匂いのする湯船に脳みそをちゃぷちゃぷさせられてる気分、良い気分。2021/04/17
しゅん
9
みなはむさんの表紙が最高。形式的に小説に当てはまるものが多くあり、これを「詩」として認めさせる力はどこから発生するのか興味がわいた。韻律ではない。おそらく、物語から生まれるズレがずっと続いているところにあるのだと思う。「砂漠航海」と「運命」が好きで、どっちも「姉」が出てくる。「パパ」の響きには近親姦の匂いが漂う。家族関係の不安定と密着、家族以外の人物の心理的な遠さ。つまり、水沢なおの詩は、「詩と小説」のズレと、「私と家族」のズレが重なりながら生起している。ということになるだろうか。2021/01/23
Moeko Matsuda
6
ちょっと、まだ言葉にならない。けれど、多分、これ男の体に生まれた者には、本当には理解できないと思う。透明で美しい悪夢のような作品。洗われるような淀んでいくような不思議な気持ち。24歳?25歳?でこんな本が出せちゃうなんてすごい…。表題作はもちろんだけど、私は「シェヘラザード」でぼろぼろになった。2021/09/26
やぎ
6
ポエムは言葉をそぎ落として意味と響きを極限まで高めたもの。そんな言葉をどこかで読んだ。その通りだった。短い文章から美しい光景や繊細な思考が襲い掛かってくる。久々に身悶えしながら読んだ。良い詩集だった。2020/04/05