内容説明
ひと昔以前にくらべ、西欧の詩の動向がはかばかしく伝わってこない現状の中で、フランス現代詩のもっとも優れた部分を担う詩人の一人であるJ=M・モルポワの代表的詩集が、多年この詩人の作品に親しみ、翻訳紹介に努めてきた訳者の筆によって翻訳されたことの意義は、じつに大きい。ここには、日本現代詩においてとかくないがしろにされがちな「世界の詩的再解釈」の営為が「青」をキーワードとして幅広く展開されていて、われわれに「すぐれた詩を読む歓び」をあらためて力強く感じさせてくれる。
目次
第1章 青いまなざし
第2章 夕刊
第3章 おぼろな教会堂
第4章 塗料商人
第5章 旗飾りした船
第6章 泳ぎ手へのあて名
第7章 うたかたの手帖
第8章 さまざまな死にかた
第9章 愛の最後の知らせ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
スミス市松
13
『夢みる詩人の手のひらのなかで』や『エモンド』から飛躍して、それまでモルポワの詩作にたびたび登場してきた鮮烈な《青》のイマージュの諸相が散りばめられた言語芸術の結晶ともいうべき作品。この詩集を見るとき、まず二つのエピグラフに注目したい。曰く、「青の歴史を誰かが書くかもしれません」(リルケ)と「そして人々は山々の頂きや、海の波、川のゆったりとした流れ、大洋の循環、そして天体の運行を感嘆して眺め、自分自身を忘れてしまうのです。」(聖アウグスティヌス)。2021/03/05
ぞしま
8
通読用、人に貸す用、神棚用に少なくとも3冊用意されたし。2021/09/16
ふるい
8
とてもよかった。心に寄り添う繊細な詩。青(海)の中に愛と死が分かち難く存在し、循環し、わたしたちを惹きつける。ため息がもれるうつくしさだった。2018/05/26
いやしの本棚
7
読み終えたと言えるかどうか。人間の悲惨と希望を青に仮託して綴る、美しい散文詩集。甘美な言葉たちにうっとりしてしまうけれど、底にはつねに悲痛がある。死への蠱惑がひらりと閃いて、読む者の皮膚を切る。けれども滲む血を洗い流すように、希望もまた寄せてくる。生への。寄せては引いていく波を見つめるように、永遠に読み終わらない一冊。2016/05/15
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