内容説明
記憶はひんやりした流れの中に立って、糸を静かに投げ入れ釣り上げては、流れの中へまた放すがいい。来日して10年、ミシガン州に生まれ育った著者の伸びやかな感性がいま、日本語という言語によって、あざやかに開花する。珠玉の32篇を収録。注目の第一詩集。
目次
ことば使い
釣り上げては
線
タッグ
ぼくらの島
放流
濡れていくと
自己ベスト
許したまえ
夏の或る日曜日〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
minimu
14
ある本を読んだとき、ふと「ことば使い」の詩を思い出してこちらを。20年以上前の本ですが、買えてよかった。これからもずっと手元に置いておきたい大切な本になりました。「釣り上げては」の哲学も好きですし、「長男のものさし」のようなほほえましい作品も良いですね。生活し、人と関わっていくなかでのことばたち。2022/06/15
あつ子🐈⬛
11
実家の本棚発掘本。ああやっぱりこの方の詩が好きだな。優しく透明なのに時おりハッとさせられる。表題作や『タックル』に見られる亡きお父さんのこと。『香港、一九九五』や『バナナ』に見られる異郷にある人々へのまなざし(ビナード氏本人もそうであるが故) 「たびかさなる出入国と洗濯でくたびれて やっと というアイデンティティから解放された。」『タッグ』 狭い世界で生きている日本人とは違うものが見えているような気がします。2022/05/28
貧家ピー
10
ミシガン州に生まれ育った著者の(日本語)第一詩集、32編。航空機事故で亡くなった父親についての詩が印象的。 釣り上げては 父と現場 特に 凄い防具を身に付けた「タックル」が好き。ジミーとのやり取りを描いた「リンゴ園の宇宙人」も良いなあ。2022/09/27
ゆきえ
10
最初はよくわからなかった。読み進めているうちに、静かな気配が漂うことが分かった。詩というより、日記に近いものなのに、やはり詩なのだ。他の作品も読んでみたいと思った。2016/09/29
にがうり
9
アメリカ人の著者が日本語で綴った詩集。英語をはじめ外国語ができないので、外国の方と接すると、人種や文化の違いの前に、まず言葉の壁があって、深いところで心が触れ合えないのがもどかしい。こうして日本語で書かれた詩を読むと、心の中で感じていることは同じなんだと分かる。著者が日本人に近い感性の持ち主なのかもしれないけれど。飛行機事故で亡くなったお父さんへの思いが切ない。ぼくらの島、放流、許したまえ、長男のものさし、リンゴ園の宇宙人、夜の森、もぐっときた。2014/09/06