出版社内容情報
幻想文学史上、不動の名作を一望する
アンソロジー、第3巻は「恐怖」の本質を暴く!
海外幻想文学紹介の礎石を築き、長年にわたり先導してきた紀田順一郎・荒俣宏の監修のもと、新生『幻想と怪奇』の企画・編集者が、名作を全6巻に集大成するアンソロジー。古典はもとより、20世紀半ばの準古典作品までを新訳を主に収録。さらに本邦初訳の名のみ知られた傑作を発掘し各巻に配する。本巻では怪奇幻想文学の根幹をなす「恐怖」をテーマに、モーパッサンからロバート・ブロックまでの10作品を収録。狂気、暴力、病魔、そして死――だが、恐怖の本質はさらなる深淵にある!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
59
往年の西洋怪奇小説を集めたアンソロジー三冊目。今回のテーマは「恐怖」という事で、HPLのあの名文章を念頭に期待して読む。ただこれ、テーマがテーマだけに内容が幅広いというか何でもありのような印象も受けるなあ。自分的にはエーヴェルスが収録されている時点で満点なんですが。他にも「音のする家」とか他には収録されないだろうし、「木に愛された男」を入れるのは決断だったと思う。両者とも冗長で現在の目から見ると退屈な部分も多いけど、どこか妙な捨てがたさがあるんだよなあ。本シリーズでしか読めないような作品、楽しかったです。2023/10/24
あくび虫
6
期待の方が上回ってしまいました。シール『音のする家』などは、要領を得なくてなんのことだか。元がぼかして書かれているらしき作品の翻訳は、時として宇宙的に茫漠です。アッシャー家の崩壊のとっ散らかりバージョンにしか思えない。トンプスン『クロード・アーシュアの思念』はタイトルからラヴクラフトを思わせますし、読んでいると『戸口にあらわれたもの』が浮かんでくるのですが、メロドラマ要素が安っぽく、劣化版の感を否めません。――『死んだユダヤ人』『影にあたし唇は』あたりは好み。『顔』『丘からの眺め』が読みやすいです。2023/08/22
モリヤマ リン
4
読了。じんわりと面白かった。ハーヴィー『五本指のけだもの』(国書刊行会)を読んだ時も思ったけど、一昔前の作家の物語も良いものだと思う。このシリーズは、怪奇小説や幻想小説の入門書にも良いのではないかと思う。2024/09/02
竜王五代の人
3
「音のする家」「木に愛された男」のような、冗長な作品が多かった感じ。良かった(ホラーだから適度な理不尽さというか)は、「死んだユダヤ人」(海の向こうにもバンカラあり!)と「とむらいの唄」。2024/08/12
timeturner
3
「謎」はユーモラスなところもあるが作者の経歴を考えると笑っちゃいけないって気になる。「音のする家」のスペクタクルな舞台設定に驚愕。アッシャー家よりスケールが大きい。「木に愛された男」は自然vs信仰であると同時に異教vsキリスト教でもあるのかな。解説を読んで思ったが、私が苦手な恐怖は「不条理感」を伴うものかもしれない。自分ではコントロールできない、なんの理由もなく降りかかってくる恐怖がいちばん怖いと思う。だからベンスンの「顔」なんて「勘弁して~っ」と思う。 2023/06/20