出版社内容情報
「恐怖や脅威は、私の小説の主要なテーマのひとつ
だ。特定の人間に対して感じる恐怖ではなく、見知ら
ぬ環境や状況がもたらす恐怖だ」
「小説家としての私のキャリアにおける最大の事件
は、モロッコへ出かけたことと、グアテマラで生まれ
たことだと思っている」
・・・・ロドリゴ・レイ
ローサ
内容説明
耳を澄まし、目を凝らして、ファナティックな人間と組織が陥りやすい狂気の世界を描くレイローサ。だが、ときおり息をひそめるように、語り口が寡黙な作家は、たっぷりと余白を残した描き方に留めて、物語の解釈は私たち読者に委ねられている。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
カイロス時間
8
海軍の大将が心理検査を受ける。無事に通過して正常な精神を持つことを証明せねば、将校ではいられないという新法が制定されたから。しかし検査が始まる前から大将の周りでは奇妙なことが起こり始め、検査担当の博士に対する不信も募り、大将の精神は徐々に蝕まれていく・・・刈り込まれた短文に必要最低限の情報を乗せて、暗示的に進んでいく物語。大将個人の心理を中心に据えつつも、軍隊という巨大組織の得体の知れない意思が見え隠れする。高い階級の者でさえ、その地位は安泰ではない。そこにはいつでも転落の可能性がある。個人の精神同様に。2021/08/21