出版社内容情報
幻聴・妄想に比べ軽視されてきた統合失調症の認知機能(記憶・思考・注意)障害の改善。第一人者がその全容を詳解します。
診断確立の時代,クレペリンやブロイラーらによって光を当てられた統合失調症の認知機能障害は,幻聴・妄想といった陽性症状への対処のなかで,「変化しない症状」としてながらく臨床的に省みられることがなかった。■精神科医療が地域移行の時代をむかえ,当事者の主体的な生活のためのリハビリテーションが志向される中で,記憶・思考・注意といった認知機能の改善がにわかにクローズアップされてきた。■日常生活や就労・就学において必要なのは,一人ひとり固有の希望を実現していくための応用力の改善である。認知機能改善療法(Cognitive Remediation Therapy : CRT)はメタ認知に注目し,個別状況をこえて生活スキルを改善する(スキルの転移)ための包括的なリハビリテーションプログラムであり,良好な治療関係の中で自己効力感と自尊心を回復する心理療法である。さらに認知機能の改善は他のリハビリテーションプログラムの効果と効率にも大きな影響を与える。■認知機能とその障害に関する研究を網羅し,改善のための理論モデルと臨床の原則を提示する本書は,メンタルヘルス・サービス従事者にこの新しい領域の詳細な見取り図を与えるだろう。
【著者紹介】
富山大学大学院医学薬学研究部(医学)心理学准教授
博士(医学),富山医科薬科大学。1988年より富山医科薬科大学医学部精神神経医学助手,1997年より同心理学助教授を経て,2007年より現職。この間1995~1997年まで,米国ペンシルバニア大学医学部精神医学脳-行動研究部門ポストドク研究員(文部省在外研究員)。
専門は臨床神経心理学,認知神経科学。
主な著書
『精神疾患と認知機能』(分担執筆,新興医学出版社,2009年),『専門医のための精神科リュミエール10:注意障害』(分担執筆,中山書店,2009年),『統合失調症の治療:基礎と臨床』(分担執筆,朝倉書店,2007年),『認知心理学の新しいかたち』(分担執筆,誠信書房,2005年),『新世紀の精神科治療第6巻:認知の科学と臨床』(分担執筆,中山書店,2003年)ほか。
内容説明
記憶力/集中力/順序だてて考える力(実行機能)。地域生活、就学、就労etc.を主体的に営むための力は改善できる。「変化しない症状=認知機能障害」に挑む治療の全体像。リカバリーの礎。
目次
第1部 治療の発展(統合失調症における認知機能改善療法(CRT)の歴史的背景
統合失調症における認知機能の概観
認知機能障害の説明
統合失調症の認知機能障害になぜリハビリテーションを行うのか?)
第2部 認知過程の改善(実験室における認知機能の変化;臨床場面における認知機能の変化;認知機能の変化がもたらす効果)
第3部 治療過程(認知機能改善療法における理論的モデル;認知機能改善療法の内容と過程;アセスメントと定式化;認知機能改善療法の実践―ケース研究;認知機能改善療法の将来)
著者等紹介
ワイクス,ティル[ワイクス,ティル][Wykes,Til]
ロンドン精神医学研究所、臨床心理学とリハビリテーション部門の教授
リーダー,クレア[リーダー,クレア][Reeder,Clare]
Oxleas NHS Trustの臨床心理士でありロンドン精神医学研究所の講師
松井三枝[マツイミエ]
富山大学大学院医学薬学研究部(医学)心理学准教授。博士(医学)、富山医科薬科大学。1988年より富山医科薬科大学医学部精神神経医学助手、1997年より同心理学助教授を経て、2007年より現職。この間1995~1997年まで、米国ペンシルバニア大学医学部精神医学脳‐行動研究部門ポストドク研究員(文部省在外研究員)。専門は臨床神経心理学、認知神経科学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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