内容説明
本書の対象は、20世紀の歴史研究と歴史叙述における主な潮流と問題点である。執筆のきっかけは、1990年4月、フィラデルフィア哲学財団で行われた「理性と歴史」に関するロツェク・コラコフスキとの対話である。この対話で著者は「啓蒙主義には、歴史との科学的な取り組みは可能であり、学問は解放的な役割をもつ、との考え方があるが、これは、ポストモダンの思想が歴史の一貫性だけではなく、人間の思考の一貫性そのものを根底から否定した現在でも有効か否か」の問題を論じた。著者が当時とくに関心をもっていたのは、ポストモダンの時代における歴史思想の役割である。本書の内容は、すべてではないが、この問題関心に規定されている。
目次
第1部 古典的な歴史主義から分析的な社会科学としての歴史学へ
第2部 歴史社会科学から「言語論的転回」へ―最近20年の歴史理論と歴史叙述