内容説明
青年期の欧州歴訪を経て、国民とともに歩む立憲君主たらんと志した昭和天皇。現実政治の前で悩み、君主のあるべき姿を体現した87年の生涯を、宮内庁が24年の歳月をかけて編纂した正史『昭和天皇実録』をはじめ560点に及ぶ文献をもとに描く。
目次
第1部 君主とはどうあるべきか(かくて「聖断」は下された;昇陽の日々;帝王教育;天子への道)
第2部 君主は政治とどう関わるべきか(青年君主の苦悩;満洲事変と国際孤立;万歳とファッショ;二・二六事件)
著者等紹介
川瀬弘至[カワセヒロユキ]
産経新聞東京本社社会部編集委員。昭和43(1968)年、神奈川県生まれ。平成6(1994)年、産経新聞社入社。主に社会部に所属、文部科学省担当として歴史教科書問題などを取材する。19~25年、産経新聞社発行の月刊誌『正論』編集部。26年、宮内庁が『昭和天皇実録』を公表した際には、社会部で取材班のキャップを務めた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Ohe Hiroyuki
3
産経新聞にて数年前の連載が元にできた本。『昭和天皇実録』の記載を踏まえて執筆されている。▼上巻では、満州事変辺りまでのことが書かれている。政治と軍部との関係が徐々にフォーカスされていく。元、新聞に掲載されていたこともあってか、マスコミの社会(政治)に対する影響という文脈がしばしば登場する。マスコミが誕生してから今も昔もマスコミの影響力は大きい。▼昭和天皇が、どのような育てられ、どのような教育を受けたのかが丁寧に書かれており、大変参考になる。注釈が丁寧に書かれており、研究にも活用可能であるように思う。2024/12/14
熱東風(あちこち)
0
嘗て、かの司馬遼太郎が西郷隆盛のことを把握しづらい人物だと評したというが、私にとって昭和天皇はある意味その真逆とも言えるお方ではなかろうかと思う(こういう表現は不遜かも知れぬが)。というのも、激動の時代の中、ご自身には理想とする世界がありながらも出張ることなく、明治憲法という“枠”にその身を置くように努めて心がけて“立憲君主”であろうとなされておられたようにお見受けするからだ。とはいうものの、ここぞという場面ではその枠を踏み越えざるを得ないこともあるのが戦前という時代。/第一次近衛内閣成立までがこの上巻。2020/07/09