内容説明
明治につくられた「国民の軍隊」は大正、昭和という時代への変遷で、いかにして「皇軍」へと変わっていったのか。満州事変を始め、世にいわれる昭和の動乱は軍部を政治へと驀進せしめ、日中戦争、太平洋戦争へと破局の道を走り続けた。驕慢による軍の独走、国軍の実を失い、国民の心とはなれた推移を解き明かす。
目次
「国民の軍隊」を自覚するもの
明治建軍
天皇の軍隊とその消長
軍の威信地に墜つ
軍隊受難の一とき
国民の前の治安軍隊
軍部の主張通らず
昭和初頭における治安出動
皇軍至上絶対への道
皇軍盛んにして病根あり
中国戦場における光と影
二つの国境紛争事件
太平洋戦場での「皇軍」
「皇軍」の精神的退廃
著者等紹介
大谷敬二郎[オオタニケイジロウ]
1897年、滋賀県に生まれる。1919年、陸軍士官学校卒。1930年、憲兵科に転科。1938年、東京憲兵隊特高課長、1944年、東京憲兵隊長、1945年、東部憲兵隊司令官を歴任する。1976年12月、歿(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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nnpusnsn1945
10
著者が軍にいた身ゆえにバイアスは多少かかっている箇所はあったが、昭和維新、大陸戦線から南方に至るまでの軍紀弛緩については厳しく追及している。規律に厳しい憲兵ならではの視点である。旅順虐殺や、朝鮮の統治、社会運動について触れられているのも評価できる。まだ詳しく読んではいないが本土における具体的な軍人の犯罪は、「日本大空襲」と照らし合わせて見るとさらに理解が深まるかもしれない。ちなみに、終戦後のクーデター未遂にも記述があった。意外にも広く出来事を取り上げている本である。2020/09/22
Eiji Nanba
1
著者は終戦当時東部憲兵隊司令官なので、旧陸軍に対してのノスタルジーはあるのだろう。が、「国民の軍隊」が「皇軍」となってしまってからの記述は辛辣である。その時代を生きた人物の証言としては意味があると思います。興味深く読むことができた一冊でした。2017/10/28