内容説明
第一次大戦後、苛酷な講和条項の首枷とインフレにあえぐドイツ民衆の前に現われた鉤十字の旗は、巧みな手管で全国土の空に翻った。絢爛華麗な文化を育んだ民主体制の崩壊は、なぜ生じたのか―当時、ドイツに駐在し、ヒトラーとも会談した著者が、国民の心情の移ろいをも交えてナチス支配の道程を克明に描く。
目次
革命の前奏は暗く
幻想集団スパルタクス
ワイマール体制の墓標
屈辱講和の後遺症
インフレ狂躁曲
ヒトラー上等兵の冒険
雌伏するヒトラー
褐色の制服に着かえて
ディートリッヒが歌ったころ
ポツダムの誓い
第三帝国の誕生
神々の黄昏
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
北之庄
4
第一次大戦後の僅か15年足らずで終わった独ワイマール政府を描く本書。カントやゲーテ、ベートーヴェンを生んだ独民族が、何故にヒトラーに盲従したのか?それは元来ロマンチックな独人達が米英からお仕着せのワイマールの合理的システムへ感情移入できず、逆にナショナリストたる彼の演説の魔力に放心陶酔したこと。加えて政権与党であった社民党等リベラル勢力が、膨張するナチスを過小評価し、大同団結なく党利党略に終始したことである。総選挙目前の我が国、リベラル勢力の結集によって、何としてもこれ以上の巨大与党の横暴を阻止願い度い。2014/11/15
Yasuhisa Ogura
2
参議院選挙にあわせて読み進める。第1次世界大戦の敗北からヒトラー政権誕生までの混乱するドイツを描いたもの。著者は、外交官として当時のベルリン大使館に勤務しており、ヒンデンブルグやヒトラーなど歴史の登場人物とも面会している。本書は著者の目を通した歴史書であり、それだけに普通の歴史書には表れない空気感までもがリアリスティックに描かれている。ナチスは合法的に政権を奪取したといわれているけれど、本書ではテロや殺人などの暴力手段とプロパガンダによって政権を奪取していく過程が鮮明に描かれている。2016/07/11