内容説明
フィリピン沖三百マイルの太平洋上で、敵潜水艦の魚雷攻撃を受けて乗艦沈没の憂き目にあった軍艦名取短艇隊百九十五名の生還の記録。食糧も、真水もなく、航海用具も持たず、十五日間も橈を漕ぎ続け、二十七歳の先任将校の決断、次席将校の補佐、隊員の団結で、死の運命を切りひらいた海の男たちの感動の物語。
目次
第1章 撃沈
第2章 漂流
第3章 決断
第4章 橈漕
第5章 暗雲
第6章 生還
著者等紹介
松永市郎[マツナガイチロウ]
大正8年、佐賀県三養基郡に生まれる。昭和15年8月、海軍兵学校卒業。練習艦隊(香取)、「陸奥」「榛名」乗組。「古鷹」分隊長、第六艦隊司令部付、「那珂」「名取」「葛城」、内海航空隊の各通信長をへて、岩国航空隊通信長のとき終戦。海軍大尉(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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micky
10
一風変わった漂流記、でも実際に漂流した際に参考になる記述も多い。作者の海兵同期が軍記もので有名な豊田穣なところが面白い・・2021/05/19
みかん。
6
自然や天道に対して人間はどう生きるべきなのだろうか。本書は文明論としても読める一冊。天道のあらわれや哲理に向き合う本だと感じました。近所のご老人の言い伝えから星辰信仰、科学知識を駆使してフィリピンの南溟を走破する。2024/04/04
ken
3
漂流記。内容も書物としても素晴らしい。 米潜水艦に沈められた巡洋艦のカッター三隻がフィリピンまで到達する苦難の物語。 松永さんの父は、プリンスオブウェールズを沈めた司令官だったことにも驚いたが、松永真理が娘だったことにもさらに驚いた。 iモードの生みの親の祖父は、航空機で戦艦を沈め、父は軍艦の通信士官。三度撃沈された経験あり。2017/11/12
はばたくキツネ
3
乗艦を撃沈され遭難した将兵200名余りが、食糧や水もなく、手漕ぎの短艇で太平洋を300マイル踏破し生還したその記録。先任将校を筆頭とした士官らの優れた指揮、人心掌握には脱帽の一言。旧海軍の“善”の面を大いに覗かせてくれる名著である。著者のユーモラスで軽快な文体も心地良く、一級の「漂流文学」としても楽しめるだろう。2013/10/10
roatsu
3
乗艦撃沈後の漂流記であるが、海軍軍人というプロ集団とはいえ若干27歳の一大尉がよく部下を統率してリーダーシップを発揮して生き抜いた事実に驚嘆する。我が身を振り返って今の世の日本人の27歳にそんなことができるだろうか?と思ってしまうが当時は戦争という状況下とはいえ若年者であっても決然と行動して責任を果たすのが当然だったということ。同様に過酷な遭難をして生還した軍人の話は結構あるので本書もさもありなんと読める。我々の日常でも往時の海軍の合理主義でことにあたれる場面が多々あると思う。2009/07/27
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