内容説明
江戸・下町の女たちがささやかな幸せをもとめて健気に生きるさまを描く、泉鏡花賞受賞作家の時代小説集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
山内正
3
忙しいの私はと店に入って来た おるいの老舗君嶋が潰れそうになってると噂がと、おまつが 貯まった金で料理屋出したいのよと 羽振りの良さを見せつけ帰り際 少し助けようか声を掛けた 三年前はおまつが苦労話をしに何度も来た おるいは借りる人がいない 肩肘張ってたら疲れるだろうもっと楽におなりよと以前から言ってくれた 思い出す なりふり構わずの言い方に 恥ずかしく外に出た 酒仙が追ってきて 私もあと三年だと陰で言われてるのさ 今が胸突き八丁だ越えられるさ 貸してくれる話がね 五色饅頭蒸さず焼いたらと思えた 2020/04/07
山内正
2
いつも大皿にのせるおてつが 丁寧に分けている いい男でも出来たのかと、中間が聞く もう別れたよ あれで二人の子持ちだよ亭主は七年前に死んだとよ 要次郎は中間賭場を出てそば屋に おてつがいた、早く帰らないのかと 気になり近くの長屋を探す 男がすり抜け家に入り平手打ちの音がし子供が二人飛び出す 帰ったぜと男の前に座り なんだと 怒って男は出て行った 朝起きると裾が半分切られてた 徳松がやったんだ 聞かせておくれ要さんに惚れたって良いだろう? 行かないでおくれよお願いだからさ うちの子二人共いい子だろう? 2020/04/03
山内正
2
暑いねーと裾を捲り煙草を吸い あごをしゃくり お蝶と 友七が立っていた 嫁の家に帰れない、兄の家は真っ平だと ご託を並べ 友七の愚痴には飽々するが 商売の客だけの男にとは思うが 両国橋迄送り 済まなかったと謝りなよ もう来なくていい、帰んな! 二月姿を見せない もう客で来ない 髪結おとくんちへ入浸りさと 客寄せの安蔵が閉まってた 開いてる筈のと思う時叫び声と捕方の声がし 家陰に隠れた 取締が来たと! 縄を掛けられおとくが出てきた 煙草屋の女房の癖して亭主は逃げた 帰ぇんなと おとくが庇ってくれた2020/03/29
山内正
2
酒癖女癖の悪い夫が出て行き 富吉を頼るおたねは変わった 客も少し増えた おぬいは店を出て家の行灯の火を見るとほっとする 一日延ばしを今言おうと母に 子が居るのその人と話し出す 嫁に行っていい?二度別れたんだけど 今の油屋の株買うのに母に借金して 頭が上がらない 嫁は嫌気がさして家を出たと そんな男今だけさと一口酒を呑んだ 店でおたねと富吉が伊兵衛が 富吉は伊兵衛はいい人だ今度だけだよと言い訳する 四月に嫁ぐことにきまり離れ立て直すとな 今頃菜種畑の買付に歩き回ってるはず 雨の中菓子を母の為にと傘を指す 2020/02/15
山内正
1
女を渡り歩き一年前料理屋の娘の婿に 友七は料理の腕はいい 十日前その店を飛び出した 前の女が原因だと 陰女郎のお蝶は三日で良いから一緒に暮せたらと思う 遅ぇやもう居場所がねぇんだと言う 安蔵に客の世話をしてもらう事に 二ヶ月友七は髪結おとくに入り浸り 世間で嫌われるおとくになんぞと 仕事の話をと安蔵の家に 留守だ! 帰る道でいたぞーと声が近づく 隠れたあと家に、お藤の戸が開いてた 首に晒し布巻いて逃げ廻る姿が目に浮かぶ 縄を掛け引ずられるおとくが出てきた 友七は逃げたようだ 誰も居なくなった町を歩く2020/02/22