内容説明
法の支配を堅持し、権力の抑制と均衡を図る“人権の砦”である司法が、いま、おかしい。裁判員制度が示す、グローバル化における国家の変容、政府の役割の変化、そして司法のポピュリズム化―ポピュリズムが蔓延する世界を司法は抑止できるのか。
目次
第1講 民主政治における司法の役割―権力の抑制と均衡
第2講 民主主義と自由主義―多数の支配か、法の支配か
第3講 ポピュリズム化する政治―司法は大丈夫か
第4講 司法の民営化―福祉国家から治安国家へ
第5講 司法の治安機構化―警察と司法の連動
第6講 裁判員の義務と思想・良心の自由―死刑は正当化できるか
第7講 プロフェッショナルとしての裁判官―改革すべきは司法官僚制
第8講 破綻する裁判員制度―廃止するしかない
第9講 ポピュリズムはファシズムか―司法と民主主義の危機
著者等紹介
斎藤文男[サイトウフミオ]
1932年和歌山県生まれ。1956年京都大学法学部卒業、58年大阪市立大学大学院法学部研究科修士課程修了。1961年九州大学教養部講師、助教授、教授をへて同法学部教授。1996年定年退官、名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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おさむ
30
九大名誉教授による裁判員制度の批判本。国民の司法参加なるお題目で始まった同制度を「司法のポピュリズム」と断じて、即時廃止を訴えている。国民の関与は検察審査会や最高裁判事の国民審査で十分、という。やや上から目線な気もするが、たしかに導入から9年が過ぎて、裁判員を断る人が増えているうえ、多くの市民が有罪無罪を判断する自信がないと考えているのは事実だし、問題だろう。事実認定に関わるだけで量刑や判決には関わらない、米国型の陪審員制度の方が良かったのかもしれません。2018/07/26
うがり
4
ポピュリズムに染まっていく世界情勢は日本も例外ではない。そのポピュリズムと司法(特に裁判員制度)を論じながら裁判員制度を批判している。筆者の言うように「民主主義」「国民主権」など社会で習うような知識は差異があっても、どこか混同していく。自分もどちらかと言うと裁判員制度は国民の「権利」的側面があると思っているところはあったので、違う視点を入れる意味では良かった。講義形式なため若干上から目線で話しているのはしょうがないと思うが、そのために読み進め辛かったのもまた事実。2019/07/18