内容説明
命が大事か、家か、それとも金のためか?天皇を京都に残して、地方へ脱出。朝廷の仕事もサボタージュ。乱世を生き抜く非武装の男たち。
目次
序章 公家と武家の時代
第1章 厳しい公家の生活
第2章 地方に下る公家たち
第3章 勤めを果たさない公家たち
第4章 戦国大名と公家との婚姻関係
第5章 天下人との狭間で
終章 公家たちのその後
著者等紹介
渡邊大門[ワタナベダイモン]
1967年、神奈川県横浜市生まれ。1990年、関西学院大学文学部史学科卒業。2005年、放送大学大学院文化科学研究科修士課程修了。2008年、佛教大学大学院文学研究科博士後期課程修了、博士(文学)。現在、大阪観光大学観光学研究所客員研究員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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軍縮地球市民shinshin
11
戦国時代は公家にとって受難の時代だった。荘園という経済的基盤を武士に略奪されてしまった公家は、京都から現地に下向して直接采配を振るわねばならず、現地の戦国大名に和歌や古典文学を教示して生計を立てていた。京都は荒れ果て、朝廷の儀式もままらなくなってしまった。面白いのは前半。後半は周知の事実をページの埋め合わせに使ったような感じだ。信長と正親町天皇の話も少し出てくるが、通説をなぞった感じで感心しない。2017/07/03
Mentyu
3
公家たちが学問を教えたり、古典籍の書写をして何とか食っていけるだけの文化的な下地が戦国期にあったんだなというのが感想。戦国大名に公家文化が魅力的なツールとして捉えられなかったら、公家社会はあっというまに滅んでいたのかもしれない。2017/02/06
邑尾端子
3
同じ著者の『戦国の貧乏天皇』を読んで室町戦国期の朝廷の窮乏ぶりに興味を持ったのでこちらも読んでみた。戦乱を避けるため、あるいは収入を得るために多くの貴族が出仕をやめて疎開したというこの時代。真面目に京に残って仕えた貴族よりも地方に逃げて財力をつけた貴族のほうが出世できた例など、不条理が乱世らしくて面白い。一方で、地方に下った貴族のなかには領地を守るため武士と戦い討ち死にした人もいたりして、逃げるも残るも命がけという戦国の様相が貴族社会にもはっきり現れているのだと感じた。2013/10/29
きいち
3
白眉は前半部分、公家が自らが研鑽してきた古典や儒学の教養を使ってたくましく力強く生き抜く姿(タイトルと真逆)。政治や経済でふるわなくても教養を使おうという意志は僕らの手本だ。また、地方を訪ね歩く文人の姿は、後の世の芭蕉や菅江真澄につながるこの国の伝統の一つだろう。何より、大名だけじゃなくその家臣まで、源氏物語の講義に取り組む熱心な向学心を持っていた、というのはとても誇らしい気持ちになれる。ネットワークの伝統と学びの気持ちこそ、我が国の誇りだよなあ。2011/12/29
maqiso
2
室町時代以降に困窮していた公家は、学問に興味のある新興の有力な武家と取引したり、京を離れて暮らしたりしてしのいでいた。地方に文化的なサロンができたことや、信長と秀吉の官職への関心の差が面白い。話題が整理されていない感じはする。2019/04/26