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仏教は宇宙をどう見たか―アビダルマ仏教の科学的世界観

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  • サイズ B6判/ページ数 234p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784759813500
  • NDC分類 183.92
  • Cコード C0315

出版社内容情報

まえがき
序章 『倶舎論』への誘い
第一章 仏教の物質論――法と極微
一 物質世界のとらえ方――七十五法(三元論/いかなる作用もしない存在/無為法と有為法)
二 物質の基本要素??色法(外界の認識器官/真の実在とはなにか/認識する物質と認識される物質)
三 物質世界を構成する素粒子――極微(『倶舎論』の原子論/「おみこし理論」/極微の認識/八事倶生、随一不滅/身根の特殊性)
第二章 仏教がとらえる内的世界――心・心所
一 心・心所の構造(認識の発生/内部世界投影の仕組み/心・心所はどこにあるか)
二 心所を構成する要素(六つの区分け)
三 心・心所の動き方(六つ目の根/同時認識性/心・心所の発生要因/煩悩の断ち方/五義平等)
第三章 仏教の時間論と業??諸行無常
一 時間論の構造(業の因果関係/刹那滅の原理/映写機で考える/未来雑乱/『倶舎論』の理論と映写機の譬喩との違い)
二 業と時間の関係(異熟/業の作用で生まれる無記の現象/仏教の本質とは??小さなまとめとして)
三 世親の思想とカオス的世界観(生き物の状態を変化させる現在の行為/わずかな変移の影響/カオス理論との接点)
第四章 仏教のエネルギー概念――心不相応行法
一 生き物だけに付随する法――「得」「非得」「同分」(離繋得/涅槃の達成/生物と無生物の境界)
二 修行のための法――「無想定」「滅尽定」と「無想果」(仏教の宇宙論/須弥山の構造/天の世界と極楽/三界とはなにか/瞑想状態のレベルの違い)
三 そのほかのエネルギー概念(生命保持のエネルギー――命根/時間生成のエネルギー――有為の四相/音声言語の伝達エネルギー――名、句、文)
第五章 業より広くとらえる因果の法則――因果則の種々相(1.「いても構わないよ」因/2.「一緒に支え合おう」因/3.「心・心所で一緒に支え合おう」因/4.「仲間よ後に続け」因(=同類因)/5.「煩悩仲間よ後に続け」因(=遍行因)/6.「後になって業の果を引き起こす」因(=異熟因))
終章 分類によって変わる世界の見方――五蘊、十二処、十八界(生き物の分類??五蘊/ある刹那の世界全体の分類??十二処/現在・過去・未来の全世界の分類??十八界)
附論 仏教における精神と物質をめぐる誤解――山部能宜氏に対して
文献案内
あとがき

内容説明

仏教の思想を体系的にまとめた『アビダルマコーシャ』(倶舎論)。本書ではその前半部分で展開される「仏教的世界観の客観的叙述」を考察し、釈迦が考えたこの世界のあり方を読み解く。超越者の存在や奇跡などの超常的現象を考慮しない、原因と結果の関係で展開する機械論的宇宙。そこに示される物質、精神、エネルギー、時間、因果則などの概念とはいかなるものなのか。現代科学に通じるようで全く異なる世界観を提示し、仏教と科学の類似と相違を探った心躍る知的冒険の書。

目次

序章 『倶舎論』への誘い
第1章 仏教の物質論―法と極微
第2章 仏教がとらえる内的世界―心・心所
第3章 仏教の時間論―諸行無常と業
第4章 仏教のエネルギー概念―心不相応行法
第5章 総合的に見た因果の法則―六因と五果
終章 分類によって変わる世界の見方―五蘊、十二処、十八界
附論 仏教における精神と物質をめぐる誤解―山部能宜氏に対して

著者等紹介

佐々木閑[ササキシズカ]
1956年福井県生まれ。京都大学工学部工業化学科、および文学部哲学科仏教学専攻卒業。京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学。現在、花園大学文学部国際禅学科教授。文学博士。専門は仏教哲学、古代インド仏教学、仏教史。日本印度学仏教学会賞、鈴木学術財団特別賞受賞。年2回、科学者との公開トークセッション「科学と仏教の接点」を主宰(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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出世八五郎

12
説一切有部のアビダルマ=アビダルマコーシャ=アビダルマの倉=倶舎論=阿毘達磨倶舎論は日本に入ってきている。大乗ではないと思う。【ブッダの実践心理学―アビダンマ講義シリーズ】全8巻という大著があるが、 本書は其を一冊で解り易く紹介したものだと思う。本書は親切に書かれており読者を置いて行かず好感が持てる。 しかし、後半にいくと読者が怠けてきて付いて行けなかった。というのも細かく分類された解説に 自分に必要なことなのかと思ったから。兎角、好著であり日本に仏教と科学を結び付けようとする学者がいることに感動した。2021/07/13

黒い森会長

7
「俱舎論」の「世界像」の部分を、”現代的”に説明した本。なじめない用語が、”現代的”な説明で理解しやすくなっている。物質、精神、時間、エネルギーと説明されてゆく。「科学的」というより「現代的」と見る方が内容に近い。「俱舎論」は”解脱”のための本なので、業のしくみと心の内容はやけに詳しい。アビダルマの入門書としては良いと思う。もう一度読んで、仏教書が読めるようになりたい、と密かに思う。2018/04/22

舟江

7
仏教の科学的部分を書いた本。難しかった。その中に「煩悩の断ち方」のところで、煩悩を永遠に断ち切る心の改造が仏教修行だという記述があり。ロボトミーを連想してしまった。迷いがあるから人間なのであって、迷いを無くする鍛錬を行うとは、チョット怖い話である。2016/09/19

ウンボ

6
釈迦の仏教の哲学・ロジックの部分を体系的にまとめようとした阿毘達磨(アビダルマ)の中の代表である「倶舎論」の内容をわかりやすく解説してくれる一冊。 「仏教は世界をどう捉えたのか?」ということがはっきりと分かるようになった。よくもまぁあの難解な哲学体系をここまで思いっ切りシンプルに解説できたものだと感心せざるを得ない。 読んで良かった!!2021/11/08

鯨、或は山田

3
神秘的な超越といったものに頼ること無く、論理的な法則性を考察してこの世界と人間の輪郭を描ききろうとした倶舎論。そのロジックは非常に入り組んでいるが、それをどうにか一般的に整理した労作。日本において説一切有部やアビダルマ研究はまだ多くないなか、こういった版元からこういった形でこういった本が出ることが重要に感じる。ただ、附論における山部氏に対する批判で、物質と精神の二元論に拘泥しているのは著者も同じではないか、と思ってしまう。心・心所と色の関係を、西洋的二元論との差異のもとに議論するほうがスマートなのでは?2015/06/13

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