出版社内容情報
まえがき
序章 『倶舎論』への誘い
第一章 仏教の物質論――法と極微
一 物質世界のとらえ方――七十五法(三元論/いかなる作用もしない存在/無為法と有為法)
二 物質の基本要素??色法(外界の認識器官/真の実在とはなにか/認識する物質と認識される物質)
三 物質世界を構成する素粒子――極微(『倶舎論』の原子論/「おみこし理論」/極微の認識/八事倶生、随一不滅/身根の特殊性)
第二章 仏教がとらえる内的世界――心・心所
一 心・心所の構造(認識の発生/内部世界投影の仕組み/心・心所はどこにあるか)
二 心所を構成する要素(六つの区分け)
三 心・心所の動き方(六つ目の根/同時認識性/心・心所の発生要因/煩悩の断ち方/五義平等)
第三章 仏教の時間論と業??諸行無常
一 時間論の構造(業の因果関係/刹那滅の原理/映写機で考える/未来雑乱/『倶舎論』の理論と映写機の譬喩との違い)
二 業と時間の関係(異熟/業の作用で生まれる無記の現象/仏教の本質とは??小さなまとめとして)
三 世親の思想とカオス的世界観(生き物の状態を変化させる現在の行為/わずかな変移の影響/カオス理論との接点)
第四章 仏教のエネルギー概念――心不相応行法
一 生き物だけに付随する法――「得」「非得」「同分」(離繋得/涅槃の達成/生物と無生物の境界)
二 修行のための法――「無想定」「滅尽定」と「無想果」(仏教の宇宙論/須弥山の構造/天の世界と極楽/三界とはなにか/瞑想状態のレベルの違い)
三 そのほかのエネルギー概念(生命保持のエネルギー――命根/時間生成のエネルギー――有為の四相/音声言語の伝達エネルギー――名、句、文)
第五章 業より広くとらえる因果の法則――因果則の種々相(1.「いても構わないよ」因/2.「一緒に支え合おう」因/3.「心・心所で一緒に支え合おう」因/4.「仲間よ後に続け」因(=同類因)/5.「煩悩仲間よ後に続け」因(=遍行因)/6.「後になって業の果を引き起こす」因(=異熟因))
終章 分類によって変わる世界の見方――五蘊、十二処、十八界(生き物の分類??五蘊/ある刹那の世界全体の分類??十二処/現在・過去・未来の全世界の分類??十八界)
附論 仏教における精神と物質をめぐる誤解――山部能宜氏に対して
文献案内
あとがき
内容説明
仏教の思想を体系的にまとめた『アビダルマコーシャ』(倶舎論)。本書ではその前半部分で展開される「仏教的世界観の客観的叙述」を考察し、釈迦が考えたこの世界のあり方を読み解く。超越者の存在や奇跡などの超常的現象を考慮しない、原因と結果の関係で展開する機械論的宇宙。そこに示される物質、精神、エネルギー、時間、因果則などの概念とはいかなるものなのか。現代科学に通じるようで全く異なる世界観を提示し、仏教と科学の類似と相違を探った心躍る知的冒険の書。
目次
序章 『倶舎論』への誘い
第1章 仏教の物質論―法と極微
第2章 仏教がとらえる内的世界―心・心所
第3章 仏教の時間論―諸行無常と業
第4章 仏教のエネルギー概念―心不相応行法
第5章 総合的に見た因果の法則―六因と五果
終章 分類によって変わる世界の見方―五蘊、十二処、十八界
附論 仏教における精神と物質をめぐる誤解―山部能宜氏に対して
著者等紹介
佐々木閑[ササキシズカ]
1956年福井県生まれ。京都大学工学部工業化学科、および文学部哲学科仏教学専攻卒業。京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学。現在、花園大学文学部国際禅学科教授。文学博士。専門は仏教哲学、古代インド仏教学、仏教史。日本印度学仏教学会賞、鈴木学術財団特別賞受賞。年2回、科学者との公開トークセッション「科学と仏教の接点」を主宰(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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