出版社内容情報
僕は、町のローカルラジオ局で、深夜の番組を担当している。
ある日ラジオで、十七歳の時に絵のモデルをしたことを話したところ、リスナーから、とある美術館で、僕によく似た肖像画を見た、と葉書が届く。
そこから導かれるようにして、僕の時間は動き出した──。
土曜日のハンバーガー、流星新聞、キッチンあおい、行方不明の少年、もぎり嬢の多々さん、鯨オーケストラ……時間も空間も記憶も越えて、すべてがつながっていく、小さな奇跡の物語。
内容説明
僕は、町のローカルラジオ局で、深夜の番組を担当している。ある日ラジオで、十七歳の時に絵のモデルをしたことを話したところ、リスナーから、とある美術館で、僕によく似た肖像画を見た、と葉書が届く。そこから導かれるようにして、僕の時間は動き出した―。土曜日のハンバーガー、流星新聞、キッチンあおい、行方不明の少年、もぎり嬢の多々さん、鯨オーケストラ…時間も空間も記憶も越えて、すべてがつながっていく、小さな奇跡の物語。
著者等紹介
吉田篤弘[ヨシダアツヒロ]
1962年東京都生まれ。小説を執筆するかたわら、クラフト・エヴィング商會名義による創作とデザインの仕事を手がけている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
105
吉田さんの三部作、「流星シネマ」「屋根裏のチェリー」に続くもので完結編です。今回の作品では主人公が音楽家であるオーケストラ(表題になっています)に所属しているのですが、必ずしも音楽ばかりではなく様々なことについても関係しているようです。肖像画の絵の人物に似ているといわれたりもします。いつもゆったりとした気分させてくれます。2024/11/24
aoringo
84
心穏やかな人達の出会いと心の交流。静かで触れると壊れそうな繊細な文章。17歳の時に描いてもらった似顔絵を巡って、美術館の神の鯨、土曜日のハンバーガー、鯨オーケストラ、心の友多々さん、そしてシリーズを越えて登場の太郎とサユリ。一枚の絵を追ううちに、共鳴する輪が広がっていく。深夜のラジオみたいに、どこまでも穏やかな静けさが心地好い。この雰囲気を味わいたくて他の作品にも手を伸ばすと思う。2024/08/09
アイシャ
32
穏やかな気持ちになれる小説。そもそも主人公33歳の男性、声を使う職業ってかっこいいでしょう。ローカルな環境ながら、ラジオのパーソナリティや声優を職業とする哲夫。亡くなった父親の跡を継いで、クラリネット奏者でもある。17歳の時に描いてもらった肖像画を通して、人との縁を次々と結んでいく。懐かしい感じのする人とか、店とか、町とか、私には経験のないことばかり。でもここち良かった。鯨は大きな軸になって人を結んでいった。2024/07/10
ごーちゃん
25
著作の中でも取り分け純度の高い吉田篤弘を摂取できる良作。過去の出会い、過ごした日々、思い出は時間を重ねることにより現在のドラマチックな運命に導かれ、未来へと続く。作中の美術館で一度観た絵画を二度目にとある人物と一緒に観たときの表現として一度目は鑑賞、二度目は体験と語ってる。同一の物でも状況が変われば見え方が変わる。別場面になるが可能性は摘まないという意思。それらが物語を通して伝わってくるのが楽しくて良い読書となりました。オススメ。2024/11/10
春が来た
20
この本を手にしたのは、たまたまで。高速バスに乗ろうとした時、あ、本でも持ってくればよかったなと慌てて本屋へ寄り手にした。作者で選んだこともあるけど、これがまぁ今の私にぴったりで。それこそ、空白の部分にぴたりとハマるかのような感覚。たくさんの心地よさが集結して物語となっている。高速バスと電車を乗り継いで辿り着いた会場とこの本と。この些細な出来事が奇跡のようでただただ嬉しいし、こんなことで嬉しくなれる私で良かった。セットで思い出せる思い出。ひとつの場所へ行くことの意味が、ひとつとは限らないんだなと気づいた。2024/05/25