出版社内容情報
故郷の仙台で母親を亡くし天涯孤独となったおふゆは、母の最期の言葉を頼りに江戸に行き、縁あって、絵師歌川国藤のもと、住み込みで修業中の身である。
思うような絵が描けず、悩んでいたある日、亡くなった役者の姿を描いた「死絵」に出会う。
一方、幼少時に仙台で知り合った昔馴染みで役者の三代目富沢市之進が、浅草の芝居小屋の夏興行でついに主役を張るという。
おふゆは市之進の母親お京に誘われ、初日の舞台を見に行くことになるが……。
憂き世を照らす一途な愛と親子の絆に涙する、書き下ろし時代小説。
内容説明
故郷の仙台で母親を亡くし天涯孤独となったおふゆは、母の最期の言葉を頼りに江戸に行き、縁あって、絵師歌川国藤のもと、住み込みで修業中の身である。思うような絵が描けず、悩んでいたある日、亡くなった役者の姿を描いた「死絵」に出会う。一方、幼少時に仙台で知り合った昔馴染みで役者の三代目富沢市之進が、浅草の芝居小屋の夏興行でついに主役を張るという。おふゆは市之進の母親お京に誘われ、初日の舞台を見に行くことになるが…。憂き世を照らす一途な愛と親子の絆に涙する、書き下ろし時代小説。
著者等紹介
森明日香[モリアスカ]
1967年生まれ。福島県福島市出身。弘前大学卒業。2010年より恋愛小説の電子書籍を配信。2017年「湯河原文学賞」最優秀賞を受賞。『写楽女』で第14回角川春樹小説賞を受賞しデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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夢追人009
228
作者の森明日香さんは恋愛小説から時代小説に転身されたようで角川春樹小説賞受賞後の第1作である本書は時代劇の古さを全く感じさせずにとても読み易かったです。仙台で暮らしていた娘おふゆが母が死の間際に遺した江戸の絵師だった亡き父の師匠の元へお行きとの言葉に従い弟子入りするが男ばかりの中で自分の腕の未熟さに苦しむ。おふゆは故郷で暮らした時代に年に一度村に来た旅芸人一座の若き人気役者・市之進を慕っていたが江戸で久々に再会し心ときめくのだった。本書はおふゆの絵師の世界と市之進の芝居の世界を描きダークな面も出てきます。2023/10/25
しんごろ
153
死絵(しにえ)とは、亡き人と遺された人の思いを込め描く死者を弔う錦絵。亡くなった役者の姿を描いたのが主である。その死絵、いい加減な絵、たちの悪い絵が多いとか。天涯孤独となったおふゆが、絵師歌川国藤の弟子となり、住み込みで修行中。しかし、絵で悩み行き詰まる。そこから、どう再生するかがこの物語の本質。故郷の仙台で苦労をしたおふゆ。幼少時に知り合った昔馴染みの役者の市之進。互いに夢を追って頑張る姿が読んでで胸を打つ。市之進の母であるお京もなんと素敵なことか。一途の愛、親子愛に不覚にも涙がこぼれそうになった。2024/03/15
真理そら
64
父を知らないおふゆは仙台の旅籠で一緒に働いていた母も喪ってしまう。絵を描くことが好きなおふゆは父(絵師だったらしい)の兄弟子を頼って江戸に出る。子供の頃からの憧れの旅役者・市之進にたまに会えるのが楽しみなおふゆだが、女の身で絵師を目指すのは苦しいこともあるし、それ以上に何を描きたいのかがはっきりしないことや絵の上達が遅いことに悩んでいた。「死絵(しにえ)」という珍しいジャンルを扱った作品。おふゆが絵の方向を見出す場面が希望に満ちたものだといいなあと思いつつ読み進めたが…悲しい物語だった。2023/10/20
ぽてち
33
歌川国藤を師匠とし絵の研鑽を積むおふゆ。女だてらに絵師を目指すだけでも大変なのに、父は幼い頃に亡くなり、女手一つで育ててくれた母も既にない。おまけに師匠の怒りを買ってしまい、絵師としての仕事を禁じられてしまう。八方塞がりのおふゆだが、昔からの知り合いである旅芸人上がりの役者・市之進が心の支えだった……。四章からなる本作だが、一章でタイトルの意味が判明するとその後の展開が読めてしまった。違っているといいなと読み進めたが、残念ながら予想は当たっていた。それでも最終章での展開は予想を上回っており、涙腺が緩んだ。2023/09/25
のびすけ
30
絵師見習いのおふゆが心を動かされた「死絵」。芝居役者市之進との淡い恋。胸が締め付けられる切ない物語でした。2023/12/07