内容説明
「天下の陣借り武者、島左近、死ぬまで治部殿の陣に陣借り仕る」―筒井順慶の重臣だった島左近は、順慶亡き後、筒井家とうまくいかず出奔。武名高き左近には仕官の話が数多く舞い込むが、もう主君に仕えるのはこりごりだと、陣借り(雇われ)という形で、豊臣秀長、蒲生氏郷、そして運命の石田三成の客将となる。大戦に魅入られた猛将は、天下を二分する関ヶ原の戦いでその実力を発揮する!従来の「義の人」のイメージを塗り替えた新たな島左近。期待の歴史作家による渾身の作品、待望の文庫化。
著者等紹介
谷津矢車[ヤツヤグルマ]
1986年東京都生まれ。駒澤大学文学部歴史学科考古学専攻卒。2012年「蒲生の記」で第18回歴史群像大賞優秀賞受賞。2013年『洛中洛外画狂伝 狩野永徳』でデビュー。2018年『おもちゃ絵芳藤』で第7回歴史時代作家クラブ賞作品賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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nishiyan
16
「治部少に過ぎたるものが二つあり 島の左近と佐和山の城」と称された島左近を描いた歴史エンターテイメント作品。従来、義の人として捉えられることの多い左近を武田信玄の元で軍略を学び、その軍略を用いて大きな戦をしたいという武将として描き出している。これまで描かれてきた神格化された左近よりも家族関係に悩み、仕事に悩む等身大の左近に好感を持った。治部との出会い以前の話は興味深く読んだ。しかし曽呂利と策伝が出てきたところは笑ってしまった。同じ時代を生きた訳だからある話なのだけど。次作は誰が題材となるのか楽しみです。2019/06/13
YONDA
14
谷津氏の島左近は戦好きの荒武者。火坂氏の島左近とは全く別物で面白い。最後まで生に執着する姿には共感できなかった。いっそ酒巻に刺されて最後を迎えた方が清々しい。2022/05/27
ハッチ
13
★★★★☆島左近を描いた歴史小説。島左近と言えば筒井家からさった後、石田三成に半分の禄2万石を貰って家来になったというのが通説だか、この小説の島左近は客将として色々な家に陣借りして登場する。意外な一面もあり面白かった。2019/10/24
茶幸才斎
8
大和筒井家の家臣だった島左近は、主亡き後、豊臣秀長の下で薩摩島津攻めに、蒲生氏郷の下で関東北条家の忍城攻略戦に、それぞれ客将として加わり功をあげる。かつて武田信玄に軍略を学んだと豪語する左近は、万の軍勢が激突する天下の大戦への参戦を希求し、そして石田三成との出会いが、彼を血に飢えた戦場の山犬へと変えて行く。銃弾の飛び交う中を駆け廻り、槍や刀で容赦なく敵兵を殺傷できる精神とは、それだけである種の境界を越えてしまっているのだろう。ハイテク戦争の現代では、戦国を生きた彼らの境地に達することは永久に不可能だろう。2020/01/06
白いワンコ
7
扱う時代が安土桃山という日本史上最もドラマチックかつ良く知られた時代であるが故、微に入り細に渡って書き込む必要が無い。そこを上手く利用して、作者なりの像で島左近を描いている。曽呂利、策伝、雑賀孫市といった作者が他の作品で描いた人物も躍動し、縦糸横糸絡み合う時代の様がいかにも生々しい。次に描かれるのは柳生又右衛門あたりか?様々な角度、立場から良く知られた時代を見直せる愉快を、存分に味わおう2019/06/05