内容説明
N大学理論物理研究所助手の野々村は、ある日、研究所の大泉教授とその友人・番匠谷教授から一つの砂時計を見せられる。それは永遠に砂の落ち続ける砂時計だった!白堊紀の地層から出土されたというその砂時計の謎を解明すべく発掘現場へと向かう一行だったが、彼らは知る由もなかった―その背後で十億年もの時空を超えた壮大な戦いが展開されていようとは。「宇宙」とは、「時の流れ」とは何かを問うSFの傑作。
著者等紹介
小松左京[コマツサキョウ]
1931年、大阪市生まれ。京都大学文学部卒。61年「地には平和を」でSFコンテスト選外努力賞。64年に処女長篇『日本アパッチ族』を発表。74年『日本沈没』で日本推理作家協会賞、85年『首都消失』で日本SF大賞を受賞。2011年に逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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bura
76
「あなたは行ってしまう…遠い遠い所へ…長い長い旅へ…」10代の頃「地には平和を」「日本沈没」「首都消失」「復活の日」等々、小松左京を読み耽っていたがこの作品だけは読み損ねていた。そして読了後思った「この歳になって読めて良かった」と。白亜紀の地層から発掘された永遠に砂が落ち続ける砂時計。そこから始まる野々村の壮大な時間と宇宙を超えた戦い、その謎に追った物語を若き日の私には理解出来なかったであろう。そして輪廻の如きラスト、作者ならではの愛とスケールの衝撃を又味わえた。小松左京はやはりSFの巨人である。2025/03/04
Shun
41
SFの魅力的なテーマに”時空”という概念がある。そんな大作に相応しいテーマで人智を超えた何ものかとの争いを描き、氏の他の作品にも言えることだが本作が1966年に上梓されたとは思えないクオリティに崇敬の念を感じます。さて私たちの生活圏内では「時の流れ」はほぼ一定であると認識でき、それ故に普段は標準時間という世界共通の基準に縛られることで認知的な混乱は起きていない。しかし、もしもある時発掘された砂時計が永遠に砂を落とし続けていたらどうだろう?この遺物の背景に人智を越えた畏怖すべき何かを想像できないだろうか。2021/12/30
ざるこ
41
恐竜が岩壁の合間から聴こえる音に気付くプロローグだけでグッと引き込まれる。そして現代で6千万年前の地層から出土した永久に砂が落ち続ける砂時計。謎を投げつけられた後に突如迎えるエピローグ(その2)。そこから約10億年の時間を使って過去、未来、宇宙とさまざまな時間軸で「果てしない」を痛感する恐ろしいほど壮大な物語。意識を超越した「上の者」=神の存在を匂わせる。最後に迎えるエピローグ(その1)に行き着くと人間愛の物語とも言える。60年前の作品とは思えない!一気読み出来なかったことを激しく後悔する作品。再読必至‼2018/12/07
まちゃ
33
初版が1965年。宇宙と人間の関係をテーマにした作品。半世紀前のSF作品とは思えないスケール感で興味深く読了。2020/02/11
おにく
31
久しぶりに骨太のSFを読んだ心境です。時間を自由に行き来できる未来人の抗争に巻き込まれた物理学者、野々村は彼らの争いに巻き込まれる内に、過去から未来、そしてその先にある未知の世界を垣間見る事になります。深遠なテーマを含み、重い内容に見えますが、古代から現代に至る奇妙な事件が、未来人の介入によるものだというアイディアに、超常現象やオカルト好きは思わずニヤリとするはず。人類の末路や、未来人たちの抗争、野々村が恋人の待つ時代に戻れるのかといった伏線が、きちんと回収されているのは、筆者の力量だと思いました。 2018/07/22