内容説明
新宿で薪炭問屋「紀伊國屋」の長男に生まれた田辺茂一は、幼い頃に入った書店「丸善」の崇高で特別な雰囲気に魅せられた。そして、二十二歳で夢だった「紀伊國屋書店」を創業する。軍人の子として誕生した松原治は、大学卒業後、満州鉄道に入社するも、二十七歳で陸軍少尉となり日本のために戦っていた。別々の人生を歩んできた二人は、一九五〇年に運命的な出会いを果たし、「紀伊國屋書店」を大きな発展へと導く――。戦後、日本に一大文化を創った男たちの熱き物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
123
紀伊国屋書店を作り上げた田辺茂一と彼の協力者として働き、書店の発展に貢献した松原治の生涯を描く小説。分かりやすくて、テンポの良い文章で書かれているので非常に読みやすかった。物語自体も面白くて、読んでいて胸が躍った。本が好きだと言う純粋な気持ちだけで、紀伊国屋を作り上げていく田辺茂一の生き方は読者の胸を打つ。紀伊国屋のあの独特の雰囲気は、彼の生き方から来ているのだ。松原治は経営や営業といった本屋の屋台骨を支える地味な役割に徹する。このような生き方もまた魅力的だ。本と書店を改めて好きになる一冊だと思う。2018/06/28
ジュール リブレ
28
新宿の本屋、と言えば、紀伊国屋。戦後のバラックのヤミ市時代から店を開け、ただ本を売ることにとどまらず、文化を背負って店を続けた昭和の時代が、今、まさに面白くなってきた。これからの時代劇は、もう昭和史だね。2017/06/26
緋莢
17
新宿の薪炭問屋「紀伊國屋」の長男として生まれた田辺茂一。幼い頃に入った書店「丸善」の特別な雰囲気に魅せられ、本屋になる事を決意、21歳で「紀伊國屋書店」を 創業する。戦争で店が焼け、途方に暮れながらも、店を再開させた茂一は陸軍少尉として戦っていた松原治と出会う。二人の出会いが、紀伊國屋書店を大きく発展させていくことになり・・・2017/07/07
スプリント
15
立川談志師匠が傾倒した粋人・田辺茂一と彼を支えた松原治の話。 破天荒をつらぬきとおせたのは屋台骨を支える松原を始めたとした社員がいたからだと実感。2022/08/09
yuzyuz_k
15
読むと、本屋さんに行って見たくなると思います。 本屋の風景が好き。と言う茂一の言葉に”ハッ”とさせられました。 私も本屋の風景が好きなんだなぁと。 新宿の紀伊国屋本店。 今は無き新宿タイムズスクエア隣接の紀伊国屋書店。 横浜駅の紀伊国屋書店。 丸の内の丸善。 日本橋の丸善。 横浜駅西口のあおい書店。 横浜伊勢佐木町の有隣堂。 代官山の蔦屋書店。 辻堂のT-SITEにある蔦屋書店。 等等 どれも魅力があり、いるだけで楽しい。アマゾンやネット販売、ブックオフでは味わえない濃密な時間を貰っている様に思います。 2017/05/21