出版社内容情報
貪欲な消費者、先進国……さもしいのは誰だ?
消費者、先進国、生活保護……さもしいのは誰だ? 他人の犠牲の上に快楽を追求する現代人は「人類史上最もさもしい人々」ではないか。政治哲学の大きな問題をユーモアを交え低空飛行の視点で考える。
内容説明
現代人は「人類史上最もさもしい人々」かもしれない。次々現れる新しい機器、膨大な消費電力、捨てるほどの食料…その陰にある犠牲に目をつぶりながら、快楽を貪欲に追求し続けている。この「さもしさ」から私たちは逃れられないのか?アンパンマンが実現している正義を現実のものにはできないのか?政治哲学の大きな問題について、ユーモアを交えた低空飛行の視点で考える。あえて「青臭い議論」に挑んだ意欲作。
目次
プロローグ 「さもしさ」の話を始めよう
第1章 日常にひそむ「さもしさ」の光景
第2章 「分」を守るということ
第3章 市場はけっこう残酷だ
第4章 地球から「さもしさ」を消せるか
エピローグ 公憤と正義
著者等紹介
伊藤恭彦[イトウヤスヒコ]
1961(昭和36)年名古屋市生まれ。大阪市立大学大学院法学研究科後期博士課程単位取得。博士(法学)。現在、名古屋市立大学大学院人間文化研究科教授。専門は現代政治哲学。著作に『貧困の放置は罪なのか』(2011年日本公共政策学会賞受賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mitei
175
たしかにいろんな意味でさもしいな。2019/08/23
おさむ
32
マイケル・サンデル教授が火をつけた正義論を、日本の法哲学が専門の大学教授が説く新書。アマゾンの1円本です。主旨を換言すれば、市場経済や資本主義社会は私益の追求から成り立っている。しかし、その欲望がときに公共悪につながる。だから、お互い様の倫理=正義に基づく公平な制度をつくる。その役割を果たすのが政治だ、ということ。2017/12/07
壱萬参仟縁
30
現在の快楽の追求は、とても不平等な形になっている(13頁)。さもしさとは誰かの不幸の上に自分の豊かな生活を作り上げているかもしれないという態度(14頁)。見苦しい、の名詞。格差是正を喫緊の課題とする根拠がある。原発事故も電力会社、政府の責任(15頁)。地方が都市の犠牲という位置づけも。エコ商品に踊らされる私たちはさもしい(28頁)。エコロジーでなくエコノミーだけかもしれない。さもしいとは倫理的に言うと不正な人間関係を意味している(71頁)。多くの人は自己責任でない理由で生じた分も運命として甘受(85頁)。2014/12/20
calaf
16
「さもしさ」の話が「正義」あるいは「社会制度」の話に繋がっていくのか...なるほどと思うと同時に、意外な気もする...2012/10/12
だいすけ
12
久しぶりの新書。お手軽に読めるのがいい。本書は軽妙な語り口ながら、なかなか考えさせられる内容。正義を声高に叫ばなければならない時代は不幸な時代ともいえると著者は言っているが、そもそも自分はそういう視点がゼロだったと反省。巻末の文献リストにもあたってみたい。2017/12/16