内容説明
かつて新宿追分と呼ばれた街の、“ねこみち横丁”という路地の奥に「BAR追分」はある。“ねこみち横丁”振興会の管理人をしながら脚本家を目指す宇藤輝良は、コンクールに応募するためのシナリオを書き上げたものの、悩んでいることがあって…。両親の離婚で離れて暮らす兄弟、一人息子を育てるシングルマザー、劇団仲間に才能の差を感じ始めた男―人生の分岐点に立った人々が集う「BAR追分」。客たちの心も胃袋もぐっと掴んで離さない癒しの酒場に、あなたも立ち寄ってみませんか?大人気シリーズ第三弾。
著者等紹介
伊吹有喜[イブキユキ]
三重県生まれ。中央大学法学部卒。2008年『風待ちのひと』(「夏の終わりのトラヴィアータ」より改題)で第3回ポプラ社小説大賞特別賞を受賞しデビュー。2014年、『ミッドナイト・バス』で第27回山本周五郎賞候補および第151回直木三十五賞候補に(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんごろ
579
BAR追分シリーズの第3弾!あいかわらず面白い(^-^)今回はどの章も大好きでした(^^)前シリーズまで主人公の宇藤くんの煮え切らないというか、はっきりしないというか、なよなよしてるというか、読んでて苛立ちを覚えていましたが、今回、ちょっとだけ大人になったというか、成長がみられました(^^)このシリーズは、美味しそうな料理ばかりが出て、食べたくなる作品でもありますが、人の成長、人の暖かさ、人の優しさも感じる作品でもありますね。BAR追分に行く前に、地下の湯に行ってお風呂に入りたいなあ(^-^)2017/02/28
さてさて
412
『追分とは道が二つに分かれる場所』。そんな『追分』という言葉を店名に含む『BAR追分』を舞台に描くこの作品。そこには、『昼間はバールで、夜はバー』という設定だからこそ描ける昼と夜それぞれのお店を訪れる人たちの喜怒哀楽が魅せる物語の姿がありました。身近な”食”の”そうなんだ!”的話題にどこまでも興味が尽きないこの作品。そんな物語の中心に流れる主人公・宇藤の悩みに熱い思いが伝わってくるこの作品。どこか一つの区切りを見るような結末に、それでもまだまだ続編の登場を期待し続けていきたい!そんな思いの残る作品でした。2024/05/24
Yunemo
405
ゆっくり、ゆったり感を味わうシリーズと位置付けて。他に何もいうことはありません。メインを殆ど頼りなさげな宇藤氏の成長過程、取り巻く人達の温かさ、これを実現するのがおいしい料理。これだけ多種の料理を提示されると、一品でもいいからホントに味わってみたい。なかなか自身じゃ作れませんので。追分~人生の分岐点を見守る、料理の味と共に。人生の岐路を決める人達と料理のコラボといえますね。何といっても、登場人物達の人としての魅力が溢れて。それでも、それぞれにご苦労、陰が有りそうながら、表に出てこない今のこの姿、Good‼2017/05/22
yoshida
356
BAR追分シリーズ第3作。大きな事件は起きないが、安定した暖かさがある。今回の白眉は「蜜柑の子」だと思う。シングルマザーの真里菜は盲腸で入院する。離婚した夫の叱る口調の強さから無口になった息子の柊。退院までの数日を柊はBAR追分で過ごす。宇藤くんや桃子ちゃんとの触合いが柊の心に灯りをともす。東京を離れ、祖母の住む新潟でお弁当屋を始める真里菜と柊。最後の日の新宿の情景。この街で懸命に働き、沢山の人の優しさと出逢い、離れゆく。宇藤くんと柊の別れ際のメロンパンが芥川龍之介の「蜜柑」と重なり鮮やかな余韻を残す。2017/10/22
おしゃべりメガネ
271
気がつけば第3弾となる本シリーズで、文章の雰囲気が大好きな伊吹さん作品ですが、やっぱりこのシリーズはピカイチです。とにかく食べ物に関する描写がシンプルでわかりやすく、何より本当に美味しそうです。何度も生唾をのみ、涎が出そうになるのを我慢して読み進めました。主人公の見習い?脚本家「宇藤」君がインパクトあるのか、ないのかよくわからない立ち位置ながら物語をスムーズにリードしてくれます。4話からなる連作集なので、テンポもよくスッキリと読めますので、リラックスした読書時間になること間違いなしで、続きが気になります。2017/02/20