内容説明
身をひさいで得た売り店を繁盛店にのし上げる、いなせな女を描いた「金太郎蕎麦」(池波正太郎)、罪を犯した料理人が長い彷徨のすえ辿り着いた境地を描く「一椀の汁」(佐江衆一)、京ならではの料理を作るべく苦悩する板前と支える女の情実を綴る「木戸のむこうに」(澤田ふじ子)、異母兄弟であり職人同士でもある二人の和菓子対決「母子草」(篠綾子)、豆腐屋の婿になった塚次の困難に対峙する姿が感動的な「こんち午の日」(山本周五郎)、塩梅屋の主人・季蔵のやさしい心遣いと鰯料理の味が沁みる「鰯の子」(和田はつ子)の計六篇を収録。江戸の料理と人情をたっぷりと味わえる、時代小説アンソロジー。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
タツ フカガワ
34
6人の作家による料理人アンソロジー。板前を目指して修行していた梅吉は、ちょっとした口論から相弟子を傷つけ江戸所払いに。一瞬にして夢を絶たれた十四年後、梅吉が一椀に込めた思いが切ない佐江衆一「一椀の汁」。豆腐屋に婿入りしたものの、わがままな娘は三日目に家出。残された婿・塚次の愚直なまでの誠実さに胸を打たれる山本周五郎「こんち午の日」。この2作が群を抜いて面白かった。2021/07/04
あつひめ
27
昨年末から時代物を読むようになり、少しずつ時代物の名手と呼ばれる方々のものも読んでみたくなり、まずはアンソロジーで。言葉の使い方、町並みの表現。行間から感じ取れる匂いや音。全く違う人たちの作品が並ぶのに、どの作品も他の作品を邪魔することもない。しばらく江戸時代にバーチャル旅したくなりました。2025/01/01
あや
19
少し前から、料理がメインの時代小説が読みたいな~と思っていたら、書店で運命の出会い!どの作家さんも初読みでしたが、いくつか追いかけたいものが増えました。高田さんとか宮部さんの感じでもっとないかなー。2015/10/30
キャラメルベイベー@道北民
15
アンソロジーということで時代小説の入り口には良いかも。山本周五郎さんの話がよかったです。2016/05/05
キーにゃん@絶対ガラケー主義宣言
10
金太郎蕎麦 池波正太郎/一椀の汁 佐江衆一/木戸のむこうに 澤田ふじ子/母子草 篠綾子/こんち午の日 山本周五郎/鰯の子 和田はつ子/解説 細谷正充 江戸料理研究会によるアンソロジー。何度読んでも山本周五郎は良い。料理に限らず人が人に対する姿勢を教えられる。読んでいるまっただ中に廃棄ビーフカツ横流しのニュース。人間は能力以上に世界をひろげすぎたのかな。天ぷらそば食べたい。2016/01/22
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- 和書
- 誤訳の典型