内容説明
磔の刑が目前にもかかわらず、妹を笑わせるためにペロッと舌を出す兄の思いやりを描いた「ベロ出しチョンマ」、ひとりでは小便にも行けない臆病者の豆太が、じさまのために勇気をふるう「モチモチの木」などの代表作をはじめ、子どもから大人まで愉しめる全25篇を収録。真っ直ぐに生きる力が湧いてくる名作アンソロジー。
著者等紹介
斎藤隆介[サイトウリュウスケ]
1917年、東京都に生まれる。1933年、第一早稲田高等学院に入学。35年、中退。山本有三を慕って、明治大学文芸科に入学。卒業後、北海道新聞、秋田魁新報の記者となる。50年「秋北中学生新聞」に「八郎」を発表。1985年、逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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古古古古古米そっくりおじさん・寺
61
表紙は御存知ベロ出しチョンマである。毎日ちょっとずつ読むつもりが、夢中で読了。厚い紙を使っているのでボリュームを感じる本だが、200ページ強である。チョンマとモチモチの木は教科書以来の再読。私もじいちゃん子だったので、モチモチの豆太はバカに可愛い。朗読漫画『花もて語れ』で扱われた『花咲き山』はやはり名作。他はみな初読だが『緑の馬』『もんがく』は名作だと思う。『天狗笑い』にも元気を貰った。『でえだらぼう』は今日の引きこもり・ニート問題をふと思う。滝平二郎の切り絵抜きで読む斎藤隆介はまた違う味わいで良かった。2017/04/08
ちえ
43
小学生の時に読んだ本での「ベロ出しチョンマ」が私の初斎藤隆介体験だったと思う。ショックで忘れられなかった…。文庫で読むとこんなに短い話だったのね。「花さき山」「ひさのほし」「天の笛」…自己犠牲の話が多い中、「ソメコとオニ」「腹ペコ熊」「おかめとひょっとこ」のような笑いを誘う話も。「八郎」「三コ」等、東北(秋田)の言葉の印象が強いが東京の方だったのか。こういう自己犠牲がベースの話、最近はあまり聞かないかもしれな。たまに本棚から時々取り出して、一つ二つと読み返したい。2021/06/19
不羈
16
昔小学生の時に、半日村をぱろった一日村っていう短編を創ったな(笑)著者の作人に必ず出てくる主人公たちの“想い”が好き。共感。想いは不変だ。かつて、ベロ出しチョンマの人形が欲しくて千葉の花和村にある木本神社を地図を広げて探し回ったのも懐かしい。(実は架空の村だったって知ったのは最近のこと)2013/08/13
qwer0987
8
方言を駆使した民話的なお話が味わい深い。白眉は『ベロ出しチョンマ』。妹思いの兄は妹を悲しませないために道化を演じる。それが領主への反骨にもつながっており胸を打つ。『花咲き山』も説教臭いが懐かしさもあってか心に響く。良いことをしたら花が咲くって意識を持っていることが何か麗しい。『一の字鬼』は字に取りつかれた妄執から鬼になったわけだが、人の役に立つことをなしても、字を求めずにいられないところに業を見る。他、負の感情を見透かすようなところが印象的な『天狗笑い』、英雄譚のような味わいの『三コ』『八郎』が心に残った2024/03/07
roatsu
7
幼い頃読んだ懐かしく温かなお話。童話と言いつつも大人こそ読んで気付かされることが多いと思う。本当の強さや心優しさとはこういうものなのだろうと八郎や三コ達の姿に教えられる思いがする。個人的には緑の馬の話が好きで、緑の濃い季節に登山をして風に吹かれながら木々を見ているといつもこの話が胸に浮かぶ。一の字鬼の話は、努力しても持って生まれた資質が目指す理想に届かない挫折の哀しみを感じさせて今でも心に深く残る。秋田へ旅した時に街の書店で八郎や三コの豆本を見つけて嬉しかったっけ。2015/07/19