内容説明
本ばかり読んでいる稔、姉の雀、元恋人の渚、娘の波十、友だちの大竹と淳子…。切実で愛しい小さな冒険の日々と頁をめくる官能を描き切る、待望の長篇小説。
著者等紹介
江國香織[エクニカオリ]
東京生まれ。1987年「草之丞の話」で小さな童話大賞、92年『きらきらひかる』で紫式部文学賞、2002年『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で山本周五郎賞、04年『号泣する準備はできていた』で直木賞、12年「犬とハモニカ」で川端康成文学賞、15年『ヤモリ、カエル、シジミチョウ』で谷崎潤一郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
474
本書の最大の特質は、主人公の稔が(茜も)物語の間、何度も本を読んでいるシーンがあり(冒頭からいきなりそうなのだが)、その本の本文が直接読者の目にも飛び込んでくることである。では、作中作たるその本と小説とに相関関係があるかといえば、どうやらあまりなさそうなのだ。また、表現効果の上からもさほどに成功を収めているとは言いがたい。あらゆる点で(とりわけ経済的に)いたって恵まれた稔と、その周縁の人々の日常とが描かれてゆく。みんなそれぞれに少しずつ常軌からは外れているようでいながら、それでも「普通」の物語なのである。2021/11/24
starbro
246
江國香織は、新作中心に読んでいる作家です。タイトル同様うだうだと続く物語、世界観は嫌いではありませんが、作中作と本編との関連も良く解らない内に読了しました。帯に書かれた官能もそんなに感じられず・・・私の読解力がないせでしょうか?2017/03/10
ナイスネイチャ
197
図書館本。なかなかの世界観。読書好きで親の資産で読書まみれの生活の主人公。ある意味理想的です私には。2017/04/29
まちゃ
183
新聞の書評欄で紹介されていて面白そうだったので手に取りました。江國さん初読みでした。親の遺産で暮らす資産家で本ばかり読んでいる稔、姉の雀、元恋人の渚、娘の波十、友だちの大竹と淳子ら周囲の人々の日常。それぞれ異なる思いを抱えた人たちの重なり合うある夏の夕暮れがなんともいい感じでした。稔が読んでいる小説の文章を作中に挿入する手法はいまいち。慣れることができませんでした。2017/04/09
ケンイチミズバ
170
テレビを見る夫とは時間を共有できるが、本を読む夫は妻を置き去りにして一人別な場所に行ってしまう。とてもわかる表現で、話しかけられたくないから小説に逃げている自分自身のことも考えてしまう。別れた夫の読書好きが遺伝した娘を心配するなんておもしろい設定だ。がらくたの時ほどばかばかしくはないが江國さんらしい男と女が登場する。本編にはこれと言ったストーリーはなく、ストーリーの中で主人公が読んでいるミステリー小説の展開が本編にもからんでくるし気になった。久しぶりの江國さんの長編だった。稔のような悩みのない人生がいい。2017/03/02