感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
こたつドラゴン
8
心を打つ名著。ナイスネイチャで有名な渡辺牧場の方が書いた、馬の生死を見据えた半自伝的作品。馬に魅入られ大学を中退してまで牧場に嫁いだ著者が、競走馬になれなかった馬や引退馬の辿る結末を知り決意する。せめて自分の牧場の馬だけは幸せに生を全うさせてあげたい… エゴと自覚しつつ馬を救うため奔走し、時には現実に打ちのめされながらも信念を貫く生き様には、尊敬すると同時に痛々しさすら感じる。 この本が出版され約20年、解決には程遠いが確実に進展している今、競馬産業を語る上で避けては通れない必読の書となっている。2021/11/03
みやぎ
3
犬や猫だって飼うのも大変なのに、それより長生きするし、人間の何倍も大きな馬を最期まで面倒を見、幸せに生を全うさせるため頑張る著者。すべての馬が競走馬や乗馬として働けるわけでもなく、稼げない馬を養うという事の理想と現実。最後書かれていた馬券売上は一部養老費用にするというのいい考えだと思うけどできないのだろうか?作中にも登場したナイスネイチャも旅立ってしまいましたが、ドネーションも続けてほしい。2023/11/08
史
3
なにが人のエゴか。生命とはなんぞや。競走馬が役目を終えた時とはなにか。死生観であり、感情との関わり合いであろうか。いずれにせよ、タブーとして隠すことがなく、事実を広めることが大切なのかも知れない。2022/04/02
Marie
1
ひとつ前に読んだ本が『命の意味 命のしるし』だった。保護した野鳥にとって、安全で食べるものに困らない飼育下で生きるよりは、野生に戻るほうが、その結果自然界の競争に負けて死ぬとしても、幸せであろう、ということが書かれていた。対してこの本は、競走馬という、人が作り出し、人が産ませる命の話だ。その命が『不要』になった暁には、安楽に死なせるところまで見届けたいと思って行動した人の話だった。野にあるものは、野にあるように。人が人の都合で生み出したものは、最期まで人が責任を持つ。その根本には同じ信念を感じた。2025/06/14
HALO360°
1
競馬を全く知らないまま馬の生産牧場に嫁いだ女性の自伝。引退した競走馬の末路に衝撃を受け、馬を救うために周囲の反対を押し切って行動する。 この本の出版から20年以上経った現在でもこの渡辺牧場は養老牧場として引退競走馬の保護を行っている。つい先日、多くの人に愛されたナイスネイチャが渡辺牧場で長い生涯を全うしたが、そこには筆者の並々ならぬ努力と葛藤があったことを忘れてはならない。 絶版の本であるが、公共図書館に置いてあることもあるのでぜひ。2023/06/08