内容説明
装飾は反復が多いので見る人は積極的に注意を向けようとはしない傾向がある。そのため絵画と違って装飾にこそ秩序の感覚が重要であり、装飾の心理を探り出すことによって、造形のもっとも根本をなす無意識の世界が解明できると、著者は多くの具体例を展開しながら説く。
目次
序章 自然界における秩序と目的性
第1部 装飾―その理論と実際(審美性の問題;芸術としての装飾;強いられる対応)
第2部 秩序の知覚(視覚の節約;効果の解明をめざして;形と物)
第3部 心理学と歴史(惰性;様式の心理学;サイン(記号)のデザイン
渾沌の縁)
エピローグ 音楽的類例
感想・レビュー
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roughfractus02
6
鳥の装飾とは、世界中の音を自らの歌声で制して仲間とコミュニケーションを行なうさえずりだ、と著者はいう。自ら育ったウィーンのオーストリアバロック建築の装飾をスケッチして比較する習慣がついていたという著者は、装飾を単なる模様に留めず、生物が固有の合図を伝達する時空の制御の仕方と捉える。反装飾運動のデザイナー、アドルフ・ロースへの彼の評価もあって美術史的には穏健な主張と評価される本書だが、数学表記を用いたその認知科学的知見は、後に行為とデザインの関係に注目したD・A・ノーマンのユーザビリティの議論を思い起こす。2019/03/30