内容説明
“利益”を絶対視する「経済的モデル」があらゆる領野の思考を枯渇させ“市場”の覇権と荒廃をもたらした。危機感を抱く社会科学者たちが“贈与論”のモースの名の下に結集し、新しい「一般社会科学」と新しい民主主義への可能性を切りひらいた画期的宣言書。
目次
第1部 功利主義の力の台頭(漠然とした功利主義から支配的な功利主義へ;支配的な功利主義から一般化された婉曲的な功利主義へ)
第2部 功利的理性批判の諸要素(近代功利主義の発生に関する諸断片;功利主義と経済主義;理性の不確実さと主体のさまざまな状態;反功利主義と民主主義の問い)
結論 知の改革のために
著者等紹介
カイエ,アラン[カイエ,アラン][Caill´e,Alain]
1944年パリ生まれ。社会学・経済学博士。西パリ大学ナンテール/ラ・デファンス校(パリ第10大学)社会学教授、「政治社会学・哲学・人類学研究室」(SOPHIAPOL)共同代表。自ら中心となって1982年に創刊した『MAUSS(Mouvement Anti‐Utilitariste dans les Sciences Sociales:社会科学における反功利主義運動)紀要』(1988年から『MAUSS雑誌』と改名)の主幹をつとめる
藤岡俊博[フジオカトシヒロ]
1979年長野県生まれ。日本大学ほか非常勤講師。専門はフランス哲学、ヨーロッパ思想史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ひつまぶし
1
功利主義の勉強をしようと本を探している時に目をつけたうちの一冊。贈与の一語に目を引かれて選んだものの、難しそうなのでいきなり読むのはためらわれた。何冊か功利主義の解説書を読んで、次に何を読もうか考えていて自然と手が伸びた。反功利主義を理解する入り口としては最適だし、最近オルタナティブとしてよく目にする贈与の議論も、原書の初版は1989年であるこの本辺りが起源のようでもある。功利主義の根本的な問題点やごまかしがよくわかる。ただ、贈与については疑問も残る。また慎重に勉強していく必要がありそうだ。2021/06/07