出版社内容情報
ありふれた街の、ありふれた街角にある、「カフェ・スノードーム」。ふだんは目に留まりませんが、この場所を必要とする人には見つけることができます。店主・タマルさんの淹れたスパイシーな香りのするお茶を飲むと、不思議なことが起こって……
内容説明
カフェ・スノードームは、カフェではありません。本がたくさん並んでいますが、本屋ではありません。ヴァイオリンも宝石も飾られていますが、楽器店でも宝石店でもありません。「いったい、どんなお店なの?」そう思ったら、どうぞページをめくってください。カフェ・スノードームのふしぎを知るには、それがいちばんいい方法だと思うのです。
著者等紹介
石井睦美[イシイムツミ]
神奈川県生まれ。『五月のはじめ、日曜日の朝』(岩崎書店)で毎日新聞小さな童話大賞、新美南吉児童文学賞、『皿と紙ひこうき』(講談社)で日本児童文学者協会賞、『わたしちゃん』(小峰書店)でひろすけ童話賞、翻訳絵本『ジャックのあたらしいヨット』(BL出版)で産経児童出版文化賞大賞を受賞
杉本さなえ[スギモトサナエ]
鳥取県生まれ。2018年から福岡を拠点に活動。主に、墨汁の墨と朱色の2色のみを使い絵を描く。古い時代の小説、少女や花、動物などをモチーフにした物語性のあるイラストレーションを制作している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
☆よいこ
80
児童書。YA。ファンタジー。住宅地の中にある古い家「カフェ・スノードーム」はカフェではない。不思議な女主人タマルに声を掛けられカフェ・スノードームに入る客▽[いまいるところをでられなきゃ]妹を泣かせて叱られ家を飛び出した萌花[古い木には甘いぶどうが]30年前に出会った家を探すバイオリニスト[記憶の野原にあるものは]祖母が認知症になり寂しいつぐみ[ぬれた小犬はどこですか]黄色星人の少年[クリスマスのおくりもの]忘れものの傘▽不思議で優しい雰囲気のお話。ではそれまで、ごきげんよう。2024.12刊2025/03/13
あじ
20
小学校中学年から読める児童書です。しかしながらこの本は、これから“小説”を読み始めるステップになる要素が詰められた佳き物語でした。見失いそうなものを間接的に伝えてくれる、神出鬼没のタマルさん。「目に見えていることがすべてではない」とカフェ・スノードームに迷える人を招き入れます。タマルさんのふしぎな匂いが誘います、夢か現か─。あの忘れ物は時を経て、しかるべき時まで大切に保管されることでしょう。再会の時に私も同席したいです、予約は可能ですか?2025/01/26
糸巻
20
タイトルと杉本さなえさんのイラストに心惹かれて手に取った。石井睦美さんの作品は久しぶりに読む。カフェでもない何かを売っているお店でもない【カフェ・スノードーム】とは何なのか。ふくふくと太ったおばさんがツンケンした話し方で出迎えてくれる。彼女はタマルさんという。訪れるのは心に澱を溜めてしまっている人たち。何となく誰かに呼ばれた気がしてやって来る。不思議な体験をしてちょっとスッキリした顔で去っていく。ほんとに何なのだろうカフェ・スノードームとは。タマルさんがそこの番人なのはわかるけど。不思議なお話。2024/12/28
なななお
9
突然現れたようで、ずっと以前からあったような、蔦に絡まれた洋館、カフェ・スノードーム。風船のように丸く大きな女性タマルさんに見込まれた人だけが立ち入ることの出来る不思議な場所。夢なのか現実なのか·····。幻想的なおはなし。2025/05/22
遠い日
6
杉本さなえさんの挿絵が幻想的で、この物語の世界観を支えています。カフェでもない、他のお店でもない「カフェ・スノードーム」。不思議な現実離れした空間で、タマルさんと交わす意味深な会話。その中で訪れた者は自分に必要であろう何かを感じ取っていく。決して親しみやすくもなく、どちらかといえばぶっきらぼうで偏屈な印象のタマルさんの謎めいた存在感が強烈だ。棚の物が消えたり現れたりする部屋。タマルさんは何者だったのだろう?そして「おばさま」は誰だったのでしょう?2025/05/11