内容説明
12月の寒い夜、インド北部の小さな駅で朝を待つ四人の男。仕事も環境も異なる男たちが不運なめぐりあわせを嘆きながら、語りはじめたのは…。世界中で注目されているインド・ベンガル文学、奇跡の純愛小説。
著者等紹介
ボース,ブーダディヴァ[ボース,ブーダディヴァ][Bose,Buddhadeva]
1908~1974。20世紀の著名なベンガル人作家。ベンガルのモダニズム運動の中心人物であり、短編長編を含めてたくさんの小説、脚本、エッセイ、詩を残した
飛田野裕子[ヒダノユウコ]
翻訳家。慶應義塾大学文学部卒業。英米の文学作品の翻訳を中心に活躍(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kiisuke
28
インドが英国領だった時代のお話。恋愛や結婚観の違いが見られて興味深く楽しめました。この時代のインドの夫婦って夫が妻に従順(すぎるくらい?)だったのでしょうか。意外でした^ ^その影響か年頃の息子たちも優しくって母親にはあまり逆らわない…なんだか今の日本に通じる所があるようで面白かったです。冬のインドの小さな駅の待合室が舞台。偶然知り合ったいろんな境遇の四人の男たちがそれぞれの恋愛経験を語り合います。この偶然の数時間も四人のこれからの人生に何かしらの影響を与えるのだろうな。出逢いについて考えさせられた一冊。2015/05/23
きゅー
16
インドがまだ英国領だった頃の話。脱線事故で列車が立ち往生し、4人の中年男性が駅の待合室で夜を明かすことになった。そこで、4人はかつて経験した恋の話を一人ずつ語り聞かせることになった。いまだにインドでは女性の結婚を両親が決め、それに逆らうことなど論外だという。この物語のように100年ほど前であれば、当然のこととして自由な恋愛は禁じられ、未婚の男女が言葉をかわす機会さえほとんど無かった。だからこそ一途な愛が生まれる時もあれば、思いを伝えることすら出来ずに消えていった恋もある。2019/03/05
はりねずみ
8
英領インド時代のベンガル地方を舞台にした恋愛小説。それぞれ他人であるおじさん四人が、若い頃の一番思い出深い恋愛を語りあう。日常生活の中で突然に根を下ろし始める恋心。何をするでもなくただ視線の絡み合いのみで確認するお互いの想い、婚姻の慣習を前に誤解され踏みにじられた一途な心、病気で弱っていく最愛の人の使っていた櫛に手を置き、彼女の存在をかみしめる気持ち…一生の中で、一番高く熱く燃えたの感情の塊を胸の奥底にしまいこんで、それぞれの人が日常生活を過ごしていく。初恋の純粋な気持ちには二度と巡り会えない。切ない。2014/02/28
hiyo07
3
1つ1つの物語は短いが、短編としての質は最高級。それぞれに決められたテーマに沿って、印象の違った物語が堪能できる。共通しているのは、主人公や相手の女性の個性が一瞬にして鮮やかに見出せる、卓越した筆致だろうか。もう本当に切なくて痛くて情景豊かでねぇ、憧れと報われない気持ちと友情とが絡まり合ってなんとももう。余りにも美しい物語の終わりと、それを包むいささかあっけない静寂と、その後に訪れる早朝の淡い奇跡、なんて綺麗な物語なんだろう。この言葉と余韻をじっくり味わいつつ、少し時間をかけて読んでいただきたい作品だ。2011/08/10
サラ.K
3
ひと昔前に書かれたインドの小説。物語にはいい意味での古風さと品の良さが漂っている。語り手が中年男四人というのがまたいい。若者では表現できない深みがあるのだ。2011/03/24