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出版社内容情報
十一面観音を水辺に立てることは、町や村の近くまで押し寄せた津波や洪水の経験を記憶にとどめるためだったのではないか。大和路、琵琶湖畔、濃尾平野、三陸沿岸などを歩き、「水」との戦いの歴史であった日本列島民の足跡をたどる。
2011年3月11日東北地方太平洋沖地震とそれに伴う津波により、三陸の沿岸は甚大な被害を受けた。しかし平安時代以前に遡る社寺の多くは、高台にあり被害を免れたと報告される。
白洲正子は十一面観音が「水神」「龍神」であったという仮説を立て、日本各地を旅した。また景観工学者の樋口忠彦は、十一面観音を本尊とする奈良・長谷寺の地形を山と河川が造りだす日本列島の景観の一典型だとした。このように、三陸の沿岸をはじめ、日本各地の海や、川や、湖や、沼の畔には数多く
の十一面観音像が祀られ、「水の守護神」として地域の人々から大切に守られてきたのである。
十一面観音を水辺に立てることは、治水や利水の成果を示すため、その事業に命を懸けた先人を弔うためだったのではないか。あるいは町や村の近くまで押し寄せた津波や洪水の経験を記憶にとどめるためだったのではないか。大和路、琵琶湖畔、東京とその近郊、濃尾平野、そして三陸沿岸を歩き、「水」との戦いの歴史であった日本列島民の足跡をたどる。
一 長谷の水脈
二 岩場と洞窟
三 洪水と円空
四 津波と観音
【著者紹介】
1962年大阪生まれ。著述家・編集者。多摩美術大学芸術人類学研究所特別研究員、日本大学芸術学部写真学科講師。著書に『ごん狐はなぜ撃ち殺されたのか――新美南吉の小さな世界』(晶文社)、『日本の神様』(イースト・プレス)、『神社に泊まる――日本全国癒しの宿坊ご案内』『災害と妖怪』(亜紀書房)、『柳田国男と今和次郎――災害
に向き合う民俗学』がある。
内容説明
津波や鉄砲水の痕跡、豊かな水源や開墾…水とは不可分な列島の歴史を歩く。『災害と妖怪』の続編。
目次
1章 長谷の水脈
2章 岩場と洞窟
3章 洪水と円空
4章 津波と観音
著者等紹介
畑中章宏[ハタナカアキヒロ]
1962年大阪生まれ。作家・編集者。多摩美術大学芸術人類学研究所特別研究員、日本大学芸術学部写真学科講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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