内容説明
宮沢賢治の哲学・宗教・科学が芸術としてひとつに結晶した、珠玉の短編「やまなし」。この童話は、数々の謎をはらんで、今なお読者を魅了してやまない。本書は、「やまなし」がはらむ、すべての謎をひとつにからみあったものとして一挙に解き明かし、背後にある賢治の世界観に迫る画期的な宮沢賢治論である。巻末には現場の教師のために、「やまなし」の授業の展開法を紹介。また、増補版で加えられた補遺では、“やまなし”と“山なし”の表記の混在(ゆらぎ)の謎を解いた論考を収録。
目次
かずかずの謎はらむ「やまなし」の世界
だれがどこから“写した”のか
“水の底”の意味するもの
“クラムボン”とは何か
あるのでもない、ないのでもない
仮に名づけたもの
ふたたび、“クラムボン”とは何か
“ゆらゆら”ゆらぎの世界
“光の網”(インドラの網)
“流れて行く”もの
“せはしくせはしく明滅”する
“かげとひかりのひとくさりづつ“
“二相系”の比喩と描写
燃えさかる煩悩の火
殺生の罪について
なぜ題名が「やまなし」か
ふたたび、殺生の罪について
“二枚の青い幻燈です”
“私の幻燈はこれでおしまひであります”
「やまなし」の世界
付・「やまなし」を授業する(教師の方々のために)
増補「やまなし」に現れた「二相ゆらぎ」の世界
著者等紹介
西郷竹彦[サイゴウタケヒコ]
1920年、鹿児島生。文芸学・文芸教育専攻。元鹿児島短期大学教授。元文芸教育研究協議会会長。元総合人間学会理事、名誉博士(米国)。2017年、逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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