出版社内容情報
武の達人として世界的人気を誇る忍び。その学術的検討は近世中心にされてきたが、戦国期についても深まりつつある。下総の葛西城や武蔵の羽生城などの攻防戦で行われた忍びの戦術を、資史料をもとに探究。忍び独自の道具「忍器」を考古資料から復元し、忍びの関わりという新視点で岩槻城・八王子城の籠城戦の実像に迫る。謎多き忍びの世界へ誘う。
内容説明
忍びの学術的検討は近世中心だったが、戦国期も深まりつつある。八王子城・岩付城・葛西城・羽生城などの攻防戦で行われた忍びの戦術を探り、独自の「忍器」を復元。新視点から戦の実像に迫り、謎多き忍びの世界へ誘う。
目次
第1部 城攻めと忍び―戦国の軍と忍びを考える(一次史料からみた戦国期の忍び;永禄五年葛西城忍び乗っ取り作戦と天正二年羽生城忍び合戦;忍びにより葛西城を奪う;上杉謙信の「夜わざ鍛錬之者」から探る羽生城の忍び)
第2部 籠城戦と特殊武器―城をめぐる戦の実態と戦国の忍器を考える(戦国の忍器と天正十八年の小田原攻め―岩槻城跡・八王子城跡の特殊武器;岩付城をめぐる上杉・北条の攻防と忍び;八王子城跡の発掘調査と天正十八年小田原攻めでの忍びの痕跡;天正十八年八王子城の戦いと忍び)
第3部 これからの忍者研究(関東の忍びとこれからの忍者研究;多分野研究からみた忍者研究)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Book Lover Mr.Garakuta
17
【図書館】【速読】:蔵書として欲しい一冊。直接本に書き込みをいれたくなるような内容の本だった。慌てて飛ばし読みをするだけでは難しくて理解できなかった。2023/11/28
roatsu
14
戦国期の後北条領国内における戦とそれに関する古文書・古記録・出土遺物の検証によって「忍び」の実像に迫る最新のレポート集。出土遺物に関し、岩槻城の中世板碑を加工した石の武器や八王子城出土の素焼きの土製撒菱を現代の職人が再現する試みはその重要性のみならず、往時確かにそれを行った先人の考えや行動に触れる面白みを感じた。葛西城争奪戦に関して残る文書からは忍びが正規軍内の特務部隊で、城攻めにおいて夜間潜入や放火を行う戦術自体をも指す語だったことが浮かび上がり興味深い。一緒くたにされてきたいわゆる乱破や透波とは一線を2023/09/23
momen
1
忍者の史実上の働きを真面目な歴史学として検証した本。信頼できる記録には「忍者がやった」と書いてあるものは少ないため、本書では忍者の所業と明言しきらない上で、隠密行動、夜襲、特殊忍器で戦うなど忍者のイメージに近い軍事行動を列記。「忍器」に近い形の遺物を解説・再現作製し効力や性質を確かめるパートも。北条や上杉の戦いにおいて、内通者やサブ部隊が行った影の工作や、土玉をばらまき歩行困難にする作戦など、城攻め作戦の細部も分かり武将の戦略としても面白いので城や戦ファンにも。忍者は不明な点も多く今後の研究発展に期待。2025/03/10