内容説明
世を震撼させた保元・平治の二つの事件には、不可解な疑問がいくつも残されている。『兵範記』『愚管抄』などをもとに、乱の経過を克明にたどり、複雑に絡み合う人間模様を描写。事件の真相に迫り、時代情勢を解き明かす。
目次
第1 保元の乱(皇位継承問題と摂関家の内訌;鳥羽法皇と崇徳上皇の確執;法皇の情況認識;対立の激化;合戦の様相;乱の結末)
第2 平治の乱(保元の乱後の情況;九日事件の様相;二十五・二十六日事件の様相;後白河と二条の確執)
著者等紹介
河内祥輔[コウチショウスケ]
1943年、北海道に生まれる。1971年、東京大学大学院人文科学研究科国史学専門課程博士課程中退。現在、北海道大学大学院文学研究科教授
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感想・レビュー
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うしうし
5
再読。平安時代末期の政治動向を知るうえで、非常に興味深い著作。「皇位継承問題こそが一貫して政治の重要課題であり、政治の主たる動因で」(p174)あることを主軸に、保元・平治の乱を解説する。「皇位継承を決定するのは父(祖父)の天皇」であることから、天皇や院の視点が重要視され、武家(義朝や清盛)の動向についてはあまり重きが置かれていない。武家の動向に着目する元木康雄氏や高橋昌明氏とは対極に位置する著作といえる。元木『保元・平治の乱を読みなおす』も参照。2015/05/06
剛田剛
4
平家物語をきちんと読むためには「保元物語」「平治物語」ではなく、史実としての「保元の乱」「平治の乱」を理解する必要がある。しかしそれがなかなか難しい。愚管抄を元にすると「史実」に慈円の角度がついてしまうし、そこから離れようとしまうとすると想像に想像を重ねるしかなくなってしまう。2019/09/10
めぐみこ
3
保元平治の二つの乱について、事件の経過そのものを調べなおした本。リアルタイム記録を重視すると、通説とは違うものが見えてきた。鳥羽院はそれほど崇徳を疎んじてなかった説は新鮮だ。そもそも摂関家の対立であり、鳥羽院は中立だという意見は、同時代資料を持ち出されると説得力が増す。2018/02/20
三平
3
何故か崇徳天皇に嵌り色々資料に探す中で見つけた本。客観的な視点での資料が少ない中、簡単に手に入るので興味のある方は是非。2019/08/19
あらい/にったのひと
1
あまり馴染みのない保元の乱と平治の乱についての概説書。もう20年前の本なので、最近の研究などを取り込んだ本を新しく読んでみたいところ。珍しく系図を書いてみたいけど、書いたら分かりやすさが増したので図示は大切ですなあ。評価の分かれる後白河法皇の動きが分かる、という点でもなかなか興味深い本でした。2024/10/16