内容説明
南畝は江戸文芸界をリードする巨人であり、当代最高の知識人として江戸文化に限りない影響を及ぼした。彼の一生はそのまま江戸文化形成の歴史である。本書は多年の研鑽により資料の厳選、新史料の発掘、視野の拡大によって再検討し、特に従来の南畝伝が疑問とした部分に新しい実証的な光の照射を試みようとした野心作である。
目次
第1 少年期
第2 狂詩・狂歌への傾斜
第3 安永の南畝
第4 天明文化の開花
第5 文芸界との絶縁
第6 官吏時代
第7 文人
第8 晩年
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
果てなき冒険たまこ
1
江戸文化に関する本を読んでるとかなりの確率で登場する太田南畝。そういえばよく知らないなぁと思って読んでみた。今じゃ(たぶん)絶滅してしまった狂歌で名を馳せた人だったんだね。文化人としての自分と士分としての責任と常に持ち続ける江戸っ子としての矜持のバランスが取れている時期とそうじゃない時期といろいろあったんだろうな。ちょっと金回りがよくなると吉原通いをしてしまうのも江戸っ子らしいんだろうね。狂歌だけ読んでるとわからないけどきっと真面目な人だったんだろうな。2024/11/21
jinginakineko
1
粋な江戸っ子の南畝のイメージはガラガラと崩れた。町人と友達付き合いしつつ幕臣であることに誇りを持ち、狂歌を愛しながら同様に漢文や和学に情熱を傾ける。そうした二面性に彼自身が本来感じずともよいコンプレックスを感じていたようにも思えた。人様の奢りで吉原で豪遊しつつ、70過ぎても小役人の生活を続けねばならなかったのもまた生活上の二面性と言おうか。ずば抜けて自由な感性に恵まれつつ、きわめて不自由な人生を選んだのは、松平定信のせいばかりでなく、本人が作ってしまった生真面目な自意識の鎖に依るものではないか。2024/10/16